内容説明
エレーヌは眠らなかった。ロイックを起こしては悪いと思い、できるだけ動かないようにした。時々足と膝でシーツを少し揺すり、途切れ途切れに鼻先に届く自分達の匂いをかいだ。そうやって小さな風が送られてくるたびに、ロイックの髪がふわりと持ち上がった。「匂い」と「肌触り」を感じる、不思議な恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
uni
6
陰鬱な恋愛に疲れてたどり着いた1冊。五感で感じるさらりとした物語。お互いがお互いに気持ちを探りあい事実を勝手にぎゅっと捻じ曲げて相手を思いやる気持ちが相手を傷つけてゆく不器用な2人。よくある話。フランスの恋人の日常がいちいちかっこいい。翻訳本だからこそ読めた1冊。2016/02/03
Hirouch
5
母国フランスでは「匂い」の描写で有名のようですが、たとえば夏の匂いと言えば緑と湿気が混ざり合った濃い匂いの日本で育った自分にはこの文章が語る匂いでは物足らないです。現代フランス文学と聞いて自分が個人的に勝手に思い出す要素が全て入っています。人と人の間にあるさらりとした空気感、生活感は出ないのに生活に関する細かい描写、なんとなく無機質で静寂な空間、何でもないことをひたすらつぶやく感じ。正直あまり面白くなかった。2015/08/24