内容説明
ジェフリー・ブルーノは走る列車の中で目を覚まし、そこで言いようのない恐怖感を感じた。自分が列車に乗った記憶がなかったからだった。それだけではなかった。彼のポケットには「保険外交員ジョン・ブレイク」の名刺と、同じくブレイク宛の手紙が…。自分の中にもうひとりの自分がいるのではないか、ブルーノの不安は増しはじめ、これに追い打ちをかけるように、かたわらにうち捨てられた新聞が目に入る。“ジョン・ブレイク、殺人容疑で指名手配!”その顔写真はまぎれもなくジェフリー・ブルーノ自身の顔だった。巧みなストーリー・テリングに意外な結末も申し分のない、女王ライスのつむぐミステリー・ワールド。
著者等紹介
ライス,クレイグ[Rice,Craig]
アメリカのミステリー黄金時代を代表する作家。シカゴを舞台にした弁護士マローンとジャスタス夫妻が活躍するシリーズで不動の評価を獲得し、ユーモラスな語り口と登場人物の活き活きとした描写で日本でも高い人気を誇る。本作はマイケル・ヴェニング名義で刊行された。『眠りをむさぼりすぎた男』(図書刊行会)のメルヴィル・フェア・シリーズ第2作にあたる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kyoko
16
なんとも不思議なシチュエーションのお話。メリヴィル・フェアものの前作を考えると納得のいく構造ではあるが。登場人物紹介に過不足なくリストアップされていて、それでも最後まで誰が犯人なのかわからなくて。言われると確かにそうだなあ~と。ミステリの醍醐味。人間が大好きというメイヴィル・フェアの作る雰囲気がよくて、読後感は悪くない。2022/03/09
鐵太郎
7
この本は、ちゃんとしたミステリとしては、つまり純粋な推理小説としては、あちこちアラがあります。つじつまが合わないこともそうだし、状況が都合が良すぎる。でもね、ライスのミステリはそんなことは関係ないのです。ひたすらストーリーを追い、運命にドキドキし、展開に息をのみ、終幕にほっとすればいい。そして幸福になれた人にそっとエールを送ればいいのです。 ライスとは、そんなミステリを書く作家でした。2010/05/04
造理
6
★★★☆☆ 知らぬ間に他人名義で指名手配された男。二重人格または何者かの罠なのか?推理ものというよりサスペンス要素が強い作品でした。事件の裏に隠れた壮大な仕掛けにはニヤリ。回想が頻繁に混じって若干読みにくいところが難点でしょうか。2017/01/29
koo
5
メルヴィルフェアシリーズ2作目。主人公ジェフリーブルーノが列車の中で目を覚ますと身の回りの持ち物は殺人容疑で指名手配を受けたジョンブレイク名義であり新聞のジョンブレイクの写真はジェフリーと瓜二つであったというつかみが魅力的な巻き込まれ型スリラースタイルの作品。本格としてはご都合主義満載ですしけちならいくらでもつけられますが(笑)このプロットが1943年に書かれたのが素晴らしいですね、小説では初出なのでは。大団円からの皮肉な結末も効いてますし一読の価値ある作品だと思います。2024/01/04
Jimmy
2
クレイグ・ライスですがマローン物のユーモアがなくてさみしい感じもしますが、文体には現れていなくても筋描きはユーモアあふれていると言えば言えなくもない。トリッキーな設定ですが、着地は見事。でも途中途中の脇役の過去をフラッシュバックするのはどうも退屈でした。だから主人公があまり魅力的に描けてないように思えます。2022/04/02