内容説明
芹沢鴨の愛人お梅、平山五郎の恋人吉栄、新選組の屯所、八木・前川両家の女房たちは、それぞれの立場から、新選組内部で深まる対立と陰諜を感じ取っていた。愛する土方のため、芹沢暗殺の企みに乗った糸里の最後の決意とは?息を飲むクライマックスと感動のラスト。巻末に著者と輪違屋当主の対談を収録。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951(昭和26)年、東京生まれ。著書に「地下鉄(メトロ)に乗って」(第16回吉川英治文学新人賞)、「鉄道員(ぽっぽや)」(第117回直木賞)、「壬生義士伝」(第13回柴田錬三郎賞)、「お腹召しませ」(第1回中央公論文芸賞、第10回司馬遼太郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
237
ほぼ一気に読んでしまった。感じるのは女性の強さと涙、そして矜恃。土方の描いた芹沢暗殺の計画。それは糸里と吉栄には酷過ぎるものだった。また、七年を菱屋の為に尽くしたお梅への太兵衛の裏切り。なかなか女性に忍従を強いた物語だったと思う。その辛さがあるからこそ、お梅の前川や儀助への啖呵、土方への糸里の啖呵、会津中将への糸里の言上が耀くと思う。最期にゆきが女の子を生み名をつけ、自分の手で育てる覚悟を語り、島原の最期の夜を思い出す場面で泣けて仕方がなかった。「燃えよ剣」とは異なる新選組像。女性の強さが熱い感動を生む。2017/11/05
ehirano1
196
まさに当時の女性の側から見た新選組でした。糸ちゃんよりも、お梅の壮絶さや吉ちゃんの苦悩が強く印象に残り、糸ちゃんは最後まで矜(ほこり)を貫き通した姿に貫録を感じました。ラストで近藤さんがバツが悪そうに吉ちゃんを峠まで送るシーンとお別れのシーンはじぃ~~んと来ました。2021/11/18
mariya926
160
上巻は読むのに時間がかかりましたが、下巻は一気読みでした。それほど続きが気になりました。新選組を女子の目線で見た物語ですが、カッコイイと思っていた沖田や近藤友のイメージが変わりました。何よりも土方…。実話かは分かりませんが、かなりガッカリ。特に江戸時代は読むのは面白いですが、絶対に生きたくない時代だったので…男は男なりの生き方があって、女子は手も足も出せないかと思っていましたが、今回は女の勝利でした。「恨みは水に流し、恩は岩に刻んで生きな、人間は人間らしく生きられへんいうことも、よう知ってます」2021/01/03
いこ
108
史実はやはり重い。それを余すことなく書いた本書のような作品に触れてしまうと、ただ楽しいだけの小説なんて読みたくなくなる。それは言い過ぎ。しかし、この作品は、その位素晴らしかった。新撰組には詳しくないけれど「芹沢暗殺」をここまで詳細に、隊士たちの「その時」の気持ちまで細やかに書いた作品はあるのだろうか?隊士たちの気持ちが切ない。また、巻き込まれた女たちの想いが切ない。そして、最後までわからなかったこと。屯所の前川邸に「ろうず」の苗を植えるような芹沢鴨は、本当の悪人だったのだろうか?著者は我々に問うている。2023/06/22
文庫フリーク@灯れ松明の火
108
濃い。芹沢鴨暗殺を描きながら土方・長倉・沖田の独白と共に、莫連お梅・芸妓糸里・吉栄の独白。男の情も女の情も毒性の如く濃厚。これが各人物メインの連作短編で、最後に結びつく形ならば泣ける余地もあるのだが、これは浅田さんの作意『俗を饗す芸が俗であってはならぬ』だろうか。原田左之介の『どうやら女というのは、剣を持たずに斬り合いができるらしい』がこの作品の芯かもしれない。会津藩主・松平容保公に示した糸里の『君がため 惜しからざらむ身なれども 咲くが誉れや 五位の桜木』の一首は土方歳三との別離の決意。→続く2011/03/06