感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
珈琲好き
9
スイスとかいうスマートな大日本帝国。個人のアイデンティティが国家と同一視、独立という国是のためなら国民は命を捨てて奉仕するのは当然、極左極右の言説は容赦なく取り締まるなど。戦後民主主義の人間から見ると、なんのためらいもなく自分の国を無条件に愛せる感覚のスイス人はちょっとマトモではないような。/戦争に巻き込まれずに済んだのも、中立政策や徹底抗戦の意志を示したのもあるだろうけど、幸運の要素も大きい。2015/08/16
印度 洋一郎
1
第二次世界大戦中、スイスの中立を守り通した軍の司令官であるアンリ・ギザンの評伝を中心に、戦時下のスイスの状況をも概観。とにかく、フランスがドイツに屈服した後は周囲を全て枢軸勢力に囲まれたスイスは、ドイツへの経済的関係を深めざるを得なくなり、それを中立違反と見做すイギリスが「技術的問題」と称して領内を爆撃し、枢軸国も連合国もス中立など尊重する気も無いという極めて危険な状態だった。そして、ドイツから侵攻に備えて徹底抗戦の体制を維持し続け、終戦間近にはスイスを敵視するソ連軍の接近も脅威となり、正に綱渡りだった2016/01/16
ななみ
0
第二次大戦期を中心に、永世中立国スイスを軍事面から支えた将軍ギザンの伝記。常に戦火が絶えることがないヨーロッパにおいて自らの独立を保ち、その意志を貫くことの難しさと共に、いくつかの幸運な偶然無しではギザンの成功もスイスの平和もあり得なかったであろうことが伝わってくる。枢軸には枢軸の、連合には連合の正義があり、その裏にはまたそれぞれの悪業や裏切りがある。そんな中で生きのこるには、単に平和を唱え、夢見るだけでは全く足らないという歴史の教訓は、戦後70年を経てなお何かを我々に伝えようとしているよう。2014/11/09