出版社内容情報
不確実性が高く、グローバル / ローカルな出来事やクライシスがビジネスと社会相互に大きな影響を与えあう現代、企業はどのような価値観や倫理観をもって経営を行わねばならないのか。自社の利益の最大化を目指すというこれまで主流だった企業の価値観が、環境汚染や長時間労働による従業員の疲弊、広がり続ける経済格差、深刻化する気候変動といった、現代的な課題をもたらしているといえるのではないだろうか。成長第一主義を目指す従来型資本主義の矛盾と限界が表面化したのが、現代社会だと言えよう。
2000 年代に入り、企業は CSR や SDGs などに関わる社会的課題解決にコミットする姿勢を見せている。しかし、このような「社会貢献活動をしておけばよい」、すなわち単に「責任を果たす」という姿勢では、本当に社会のためになっているのか判然とせず、また企業にとっての経済的価値創造にもつながらないことが多い。
そもそも、この社会は企業中心にあるわけではなく、社会には、例えば非営利組織、学校、政府、メディア、人(従業員、株主、地元住民、顧客等 )、人以外(動物、自然、技術等 )など数限りないものが、対等なアクターとして存在している。このことを、企業も忘れてはいけない。
一方で、様々なアクターをつなぐ役割を果たせる可能性を秘めているのも企業である。企業は、その一員として社会を、そして地球を、他の組織や人々と共に守るという価値観によって、他を尊重し、関係をつくり、共に活動することで、Business for Society 型のビジネスを行うことが、今こそ必要なのではなかろうか。そのような、利益創出が第一目的ではないマネジメントが、長期的にみると、企業の価値創出にもつながりうる。
このような考え方に基づき、本書は、日本や世界の様々な興味深い事例を紹介しながら、社会と自社、双方にとって明るい未来につながる、これからの企業のあるべき姿と役割を考える
内容説明
人間も動物も、そして企業も、単独では生きられない。多様なアクターが対等な立場で相互作用するこの社会。全員が幸せになることは可能なのか。日本と世界の多様な事例からよき社会、よきビジネスへの示唆を導く。
目次
序章 変わりゆく「企業と社会」の関係
第1章 人間中心のマネジメント―利益志向から人間志向へ―
第2章 教育とコミュニティベースの成長戦略―パーパス・倫理の意義―
第3章 新たな連関構築と公共への貢献―遠回りな利益創出―
第4章 「人が人を呼ぶ」ソーシャル・イノベーション―つなぐプロジェクトの創出―
第5章 「小さい」「地方の」先進的コミュニティとビジネス―弱い紐帯の強さ―
第6章 企業と従業員と社会の関係性―働きがいと働きやすさ―
終章 共創時代のBusiness for Society経営
著者等紹介
潜道文子[センドウアヤコ]
拓殖大学商学部教授・副学長。1998年早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。2023年慶應義塾大学大学院経営管理研究科訪問教授。学位:博士(商学)(早稲田大学、2010年)。専門:企業と社会論、経営戦略論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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