内容説明
狼に育てられたというロムルスとレムスの伝説をはじめ、ローマ草創期をめぐる伝承が、近年の発掘調査によって解明されてきている。本書は、ローマの神話や伝承と、近世以降の文献批判を紹介するとともに、考古学調査のおもな成果を概説する。推論を極力排し、ヨーロッパの原点に迫る解説書である。
目次
第1章 伝説
第2章 文献の伝承―その形成と解釈
第3章 自然環境
第4章 ラティウム地方の文明
第5章 ローマ市の考古学
第6章 伝説から歴史へ
第7章 ローマの起源―神々・人間・王
著者等紹介
北野徹[キタノトオル]
1938年生まれ、1962年東京大学法学部卒。1970~72年フランス留学。TIS(株)取締役、日本ケーブル・アンド・ワイヤレスCSL(株)常務、TIS(株)監査役、(株)TIS東北ソフトウエアエンジニアリング社長を歴任。現在、(有)エクステリア総合研究所社長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じょあん
1
伝説は決して荒唐無稽ではなかった――そこには多くの事実が反映されている。例えば紀元前753年に誕生したとされるローマ、考古学によれば前8世紀の前葉には都市を囲う城壁が築かれたという――伝承の要約と伝承の解釈、そして近年に至るまでの考古学の成果、これらを章立てしてコンパクトにまとめている。ローマの起源について扱う貴重な良書。2022/10/14
サピエントゥス男爵
0
日本語で読める珍しいローマの起源に関する論考。本著で提示する最新の考古学及び歴史研究の成果がとても興味深い。前8世紀に市壁が巡らされたことが神話と一致していること。アンクス以降の王の実在が確認され、更に複数のタルクィニウスによるタルクィニウス朝が約1世紀間に亘り存在したこと。カエリウスとポルセンナが8人目以降の王であった可能性。通説とは違い、王政ローマは水平的な社会移動であり、階級が存在せず、平民が前5世紀以降に形成したこと。内容的にはバランスよく纏まっている良書である。2020/06/12