出版社内容情報
ベケットとともに不条理演劇の双璧をなすイヨネスコの、コミカルでグロテスクな名作集。表題作のほか、『禿の女歌手』『椅子』『アルマ即興』『歩行訓練』を収める。
内容説明
ねじれる世界、よじれるお腹。コミカルでグロテスクな表題作のほか、パスティーシュの原点ともいえる「禿の女歌手」、前衛劇のモダン・クラシック「椅子」、ロラン・バルトやブレヒトを皮肉った「アルマ即興」、僅かな言語に荒唐無稽なイメージあふれる「歩行訓練」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
34
「犀」:これは面白い!獣道好きのプーチン先生にも、ぜひ読ませたい。それとも、もうとっくに読んでおられるだろうか? これはまさしく、今演じられるべき戯曲ではないだろうか? 二組の登場人物達の別々の会話が、しだいに同期・干渉していくところが面白い。 また、日常にさりげなく異形の物語を接ぎ木してしまう手つきは安部公房を思わせ、劇のテンションを一気に頂点まで高めている。/ べランジェとジャンがカフェで話をしていると、急に商店街の方が騒がしくなる。 なんだろう? 「豚だ!装甲車だ!犀だ!」/2023/12/27
かんやん
29
クスッと笑えるところもないでもない。ナンセンス、語呂合わせ、ディスコミュニケーション、反復、メタ構造…etc 。アンチ・テアトルと呼ぼうが、不条理劇と呼ぼうが、パターン化しているような。「演劇のメカニズムを空虚にしようと」して、残ったのは空虚だったということか。ベケットと違って、イヨネスコの言葉は凄みを徹底的に欠いていて、かなり軽快でコントのようなところも。劇場で観たらどんな感じかと色々と動画を検索してみたら、面白そうではないか。ブレヒトとロラン・バルト批判の即興劇はあからさま過ぎて嫌だな。2022/08/15
singoito2
10
読友さん切っ掛け。多くの哲学者が隠喩やイメージの研究の中で言う「詩」の愉しみ、あるいは本格的な文学作品の持つ重厚で濃密な味に舌鼓を打ちながら、軽妙で洒脱な空気感を吸い込むような感覚。たまにはホンモノに触れる必要があるなぁ、と実感しました。2023/08/20
猫またぎ
7
読んでも愉しいイヨネスコ。2023/07/28
Mark.jr
5
空虚な会話がドンドン言語そのものを破壊していく「禿げの女歌手」(個人的に本書一番のお気に入りです)。空回る会話はそのままに、ブラックな筋立ても兼ね備えた「授業」。初期の不条理感と後期の政治的問題意識が合わさった、転換点とも言うべき「椅子」。そして、一番明快なストーリーと風刺がある有名作「犀」。ベストというタイトルに見合った内容かと。2023/08/01