出版社内容情報
『?東綺譚』以降の第二次大戦前後、世相の混乱期に直面した60~70代を丹念に検証し、作品や人間関係を中心に新しい荷風像に迫る
内容説明
第一人者の視点と筆さばき。『〓(ぼく)東綺譚』以降の作品と生活を中心に、老いを生きる孤独な姿を描く。
目次
1(『問はずがたり』―隠棲への思い;終戦前後のこと―菅原明朗、永井智子、宅孝二らとの交友;『来訪者』の面白さ ほか)
2(発禁本(初版)『ふらんす物語』の行方
『ふらんす物語』に見る陋巷趣味―発禁の理由を考える
ふらんすへ行きたし ほか)
3(荷風家のお手伝い 福田とよ;荷風の旧幕びいき;『断腸亭日乗』の漢語 ほか)
4(市川移住で生まれた戦後の諸短篇)
著者等紹介
川本三郎[カワモトサブロウ]
1944年東京生まれ。東京大学法学部卒。主要著書:『大正幻影』(サントリー学芸賞)、『荷風と東京『断腸亭日乗』私註』(読売文学賞)、『林芙美子の昭和』(毎日出版文化賞、桑原武夫学芸賞)、『白秋望景』(伊藤整文学賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
107
川本さんも昔のイメージをそのまま私がもっているせいか、いつの間にこのような年寄り的な考え方になってしまったのだろうという感懐を持ちました。やはり年をとると荷風が合うような感じになるのでしょう。芥川や三島は読む気になれないのでしょう。わたしも最近は荷風の随筆や断腸亭日乗などを読み直しています。川本さんも荷風の作品の評価を見直しているようです。いい本でした。2017/10/04
踊る猫
26
永井荷風について語らせたら、おそらく川本三郎の右に出る者はそういない。むろん川本の学識が確かであることもあるが、同時に彼は荷風に惚れ込んでその生き方に自分自身を投影しているという、つまりは知識だけではない愛の深さにもよるのだろうと思う。逆に言えば、荷風について語る彼についていくためにはその知識を楽しみ(むろん、ただ無駄な蘊蓄を披露する語りとは一線を画すわけだが)、その愛に共感する読者でなければならない。その意味で川本三郎の本とはこの本に限らず、読み手を試しているというか育てるという性質があるのではないか?2022/04/19
星落秋風五丈原
18
荷風ゆかりの東京の地が多数紹介されている。この本を手に東京散歩したくなる。2017/06/27
Shigeo Torii
2
覚えていること、忘れたこと、知らなかったこと、、、。2018/02/03
るな
0
永井荷風の作品を通して、荷風の交友や心情を解説する荷風論。川本さんは、年齢を重ねてますます荷風に魅了されていると語り、汲めども尽きぬ荷風愛に溢れた本だ。だから、荷風好きか川本三郎好きでない人には、興趣が湧かないとは思う。今回、久しぶりに川本さんの評論を読んだら、長年の川本ファンである私が選ぶ言葉や言い回しが、川本さんの表現の影響を強く受けていることに気づいた。2018/08/22