出版社内容情報
『土台穴』『チェヴェングール』と並ぶ代表作
プラトーノフが一九三三年から三六年にかけて執筆した長篇『幸福なモスクワ』。この「モスクワ」とは、当時、スターリン体制下で社会主義国家の首都として変貌を遂げつつあった都市モスクワと、そこから名前をとった主人公モスクワ・チェスノワをあらわす。彼女は、革命とともに育った孤児であり、美しいパラシュート士へと成長していく。来たるべき共産主義=都市モスクワを具現化するような、大胆で華やかな女性として活躍するモスクワ・チェスノワだが、思わぬアクシデントによってその嘱望された前途は絶たれる。だが、彼女の新たな人生と物語とが始まるのはむしろそこからだ。
モスクワの街を彷徨するモスクワ・チェスノワ、その彼女を取り巻く男たち――ソヴィエトの行政官ボシュコ、小市民コミャーギン、機械技師サルトリウス、医師サンビキン――は、彼女の言葉や振る舞いに触発され、思索し、対話し、自らの進むべき道を模索する。モスクワを中心に世界は回転する――自らの思い描く共産主義の理念と、ソ連社会の現実との狭間で苦闘したプラトーノフの軌跡がここにある。特異な世界観と言語観で生成するソ連社会を描いた作家の「未完」の代表作。
内容説明
特異な世界観と言語観で生成するソ連社会を描いたプラトーノフ―共産主義を象るモスクワ・チェスノワと彼女をめぐる「幸福」の物語。
著者等紹介
プラトーノフ,アンドレイ[プラトーノフ,アンドレイ] [Платонов,Андрей]
1899‐1951。ロシア南西部ヴォロネジ郊外生まれ。中等教育を経た後さまざまな職につきながら、ヴォロネジ国立大学に入学するが中退し、1919年に労働者鉄道高等専門学校に入学。蒸気機関車に乗り込みながら赤軍側で参戦する一方、十代末から地元の雑誌・新聞等に評論や詩が掲載されるなど、その創作は革命と内戦のなかで培われた。総じて作家であると同時に技術労働者でもあり、県農地局で土地改良や水利開発等で指導的役割を果たしていた時期に最初の詩集『空色の深み』(1922)が刊行される。短篇集『エピファ二の水門』(1927)で広く認められるも、「疑惑を抱いたマカール」(1929)、「ためになる」(1931)等で体制側から厳しい批判を浴び、執筆活動が大幅に制限された。死後、1960年代になってから本格的な再評価がはじまり、生前未刊行の長篇『チェヴェングール』、中篇『土台穴』がまずは国外で刊行されたが、国内での刊行はペレストロイカを待たねばならなかった
池田嘉郎[イケダヨシロウ]
1971年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士(文学)。専門は近現代ロシア史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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