出版社内容情報
亡命作家との奇妙な友情、刑事たちの対話、ポルノ女優の独白……名もなき「声」に耳を傾ける14の物語。戦慄の第一短篇集。
【著者紹介】
1953~2003年。チリのサンティアゴ生まれ。作家。1984年に初の短篇集となる『通話』でサンティアゴ市文学賞を受賞。98年に発表した長篇『野生の探偵たち』で同年のエラルデ小説賞を受賞、さらに99年にはロムロ・ガジェゴス賞を満場一致で受賞した。その後も、『売女の人殺し』など、精力的に作品を発表する。2003年、50歳の若さで死去。2004年、遺作『2666』が刊行され、バルセロナ市賞、サランボー賞などを受賞。
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- 評価
魔術か?!覚醒か?!本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
58
チリ人作家ロベルト・ボラーニョによる多彩な短篇集。個性的と言えるほど印象深い生と死があるわけではないが、主題も作風もバラエティに富んでいて面白い。しかし、唸るくらいに良いと感じるものもあれば、まるで心に響かない作品もあって困惑した。解説や訳者あとがきでも示唆されている通り、他の作品を読んでから再読してこそ真価を掴むことが出来るのかもしれない。「センシニ」「エンリケ・マルティン」「芋虫」「雪」などはとても良かった。「刑事たち」はマヌエル・プイグへのオマージュなのかと思ったがどうなのだろう?要再読。2021/02/13
ドン•マルロー
35
大長編2666を読み終えてしばらく経つが余韻が未だにひかない。むしろ作品のあまりの底知れなさに気づき、圧倒され、本当の意味で魂を揺さぶられだしたのは最近になってからなのだ。その遅れてやってくる衝撃の根拠を探るために本書を手にとった。初期の短編を集めたものらしいが、すでにボラーニョ文学の色彩が濃厚だ。ひょっこり出てきてはすぐに殺害されたり消え去ったりする登場人物に、不相応にスポットが当てられるところなどまさしくそうだろう。彼の作品では名もなき人間など存在しないのだ。ちょうどこの”愛すべき”世界と同じように。2016/09/11
のりすけたろう
31
久々のロベルト・ボラーニョ💕やっぱり楽しい✨2666 また、読みたい!いつも枕の横にお守りのように2666 があるのだけど、図書館の罠でたくさん借りちゃうからなかなか再読できない(´;Д;`)笑 でも、次はアメリカ大陸のナチ文学だな⭐️2021/06/30
三柴ゆよし
27
再読。ボラーニョのエッセンスが凝縮された短篇集。「センシニ」「エンリケ・マルティン」の二作が白眉だとおもう。特に「エンリケ・マルティン」は最後まで読むと、つぎはおまえの番だ、と喉元にナイフをつきつけられるような感じがする。文学の魔にとりつかれ、それを追いもとめる者は、いずれは自身もまた追われる側にまわるしかないという恐怖を描いている点で、『アメリカ大陸のナチ文学』『はるかな星』にも通じる部分がある。2017/01/25
みねたか@
23
三部構成の短編集。第一部ではマイナーな作家たちを描く。生計を維持するうちに失われた若さと夢。第二部で描かれるのは刑事や闇社会に属する者。不穏な政治社会情勢を背景に善悪の境界は曖昧になり死もありふれた身近なものになっていく。第三部では一転して女性の視点での繊細な語り口で物語を紡ぎだす。その多彩さは2666の重層的な世界を垣間見るよう2024/08/01