出版社内容情報
男性優位の社会の中で、国境、民族、宗教などの境界線を越えようともがく女性たち。欧米からも注目される、マレーシアを代表する女性作家の短篇小説集。
内容説明
私はどこか遠いところで子供のように生まれ直したい。自分で自分を生みたい。男性優位の社会の中で、国境、民族、宗教などの境界線を越え、制度から抜け出そうともがく女性たち。忍び寄る暴力の影。欧米からも注目される、マレーシアを代表する女性作家、初の短篇小説集。英国PEN翻訳賞受賞。
著者等紹介
賀淑芳[ガシュクホウ]
1970年、マレーシア・クダ州生まれ。マレーシア理科大学(UTM)応用物理学科を卒業後、エンジニアとして働き、2000年、マレーシアの華字紙『南洋商報』に転職、文芸欄の特集を担当する。04年に離職し、奨学金を得て台湾に留学。政治大学中国文学部で08年に修士号を取得した後、マレーシアに帰国し、トゥンク・アブドゥル・ラーマン大学(UTAR)中国文学科で3年間講師を務めた。その後、シンガポール・南洋理工大学(NTU)の奨学金を得て博士課程に学び、17年、同大中国文学科で博士号を取得。20年までマレーシアの小さな街で執筆に専念した。20年夏に台湾に渡り、台北芸術大学准教授を務め、23年8月、マレーシアに帰国
及川茜[オイカワアカネ]
専門は中国語圏文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
51
文体の読み易さにつられたら、読後の残像は霞だけ。レヴューが一行しか書けない・・分かんないと。筆者が生まれ育った母国 マレーシアは多民族国家。馬人・華人・印系等。使われる言語は多様を極める。宗教はムスリムが主。出生時に登録された民族と宗教に基づき、各自異なる制度の下に生きていく。華人家庭にマレーシアで生まれ育った筆者。理数系大学に進んだが 意に添わず文芸の道へ。台湾で学び直し、作家業。使う言語が「翻訳」というプロセスを経ずして異民族には伝えられない・・その壁を感じた。馬人作家も母国語での執筆忌避はありらしい2025/04/04
ヘラジカ
39
それぞれの作品が複雑な社会や歴史を包摂していることが、マレーシアの知識が全くない自分のような読者でも実感できるくらい一篇一篇に凄まじい重みがある。どの作品でも主人公の女性は何らかの抑圧を受けており、読んでいる最中に強い圧迫感と閉塞感を覚える作品ばかりだが、その結末や展開においては、あらゆる道筋(未来)が示されているようにも思えて美しさすら感じさせる。体力は削られるものの、精巧な物語が心の深い部分に共鳴する短篇集であった。マレーシアという国をもっと知りたい、知らねばと思わせてくれる素晴らしい本。2023/09/27
星落秋風五丈原
23
解説がとても丁寧でマレーシアという国の特殊性がよくわかった。宗教が結構強い。アミナという名前の主人公が複数の短編に登場。2023/11/07
川越読書旅団
22
初のマレーシア作家作品。11本の短篇で構成される、マレーシア特有のブミプトラ制度、民族構成(マレーシア人・中国人・インド人)、そしてイスラームと女性蔑視の慣習をベースに描く非常に興味深い1冊。2024/07/27
花林糖
16
図書館本。マレーシアを代表する女性作家(華人)の短篇集(11話)。多民族国家の複雑さ女性の地位等よくわかり、興味深かったけれど読む手が進まず残念。巻末に各話の解説があり有難かった。閉塞感と重苦しい空気が漂う短篇集でした。2023/12/03