出版社内容情報
アウシュヴィッツで26歳の若さで命を落とした天才画家の知られざる生涯。ルノドー賞、「高校生が選ぶゴンクール賞」を受賞した代表作
内容説明
アウシュヴィッツに送られ、26歳の若さで命を落とした天才画家の知られざる生涯。ルノドー賞、「高校生が選ぶゴンクール賞」をダブル受賞し、24の言語に翻訳されたフランスの人気作家による代表作。
著者等紹介
フェンキノス,ダヴィド[フェンキノス,ダヴィド] [Foenkinos,David]
1974年パリ生まれ。ソルボンヌ大学で文学を専攻。ジャズ・ギターのインストラクターを経て、2002年にInversion de l’idiotieでデビュー。2004年のLe Potentiel ´erotique de ma femmeでロジェ・ニミエ賞を受賞
岩坂悦子[イワサカエツコ]
2011年上智大学文学部フランス文学科卒。2013年上智大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士前期課程修了。2017年同大学院博士後期課程中退。その後、翻訳に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
115
画家としての才能を認められながらも、ユダヤ人であるがために26歳でガス室に送られたシャルロッテ。散文詩のような一行一文形式の文体からは、彼女の類い希な才能に魅せられ波乱に満ちた足跡を追う作者の切迫した息づかいが伝わる。血縁者の多くを自死で失い、狂気と絶望の中、自らも死の誘惑に駆られる彼女を、この世に繫ぎとめたものこそが芸術なのだ。悪化する戦況の中、創作こそが彼女の生の原動力となる。自伝的作品『人生?それとも舞台?』は、彼女の凝縮された全人生であり、芸術的な真実。そこで彼女は“永遠の今”を生きているのだ2021/02/17
ケイ
111
彼女に迫るナチスの危険より、母親やその家族の病み方が何より恐ろしかった。まともに字をおっていけないくらいに。2020/07/10
ヘラジカ
68
簡潔な一文の連なりからなる文体は手法で言えばポエトリーになるのだろうか。しかし、それは決して奇を衒ったわけではなく、作者自身が言うように一文一文に「息切れ」するくらい熱情を籠めた結果に過ぎない。削がれたというよりは、ぐっと押し固められたような文章。少し読むだけでもこうした形になった理由がよく分かる。この画家の人生を、シャルロッテが味わった恐怖や狂気を、そのままヴィヴィッドに再現したいという強い意志を感じた。死への欲動と闘い続け、希望と幸せを抱えた先に訪れた最期には絶句するしかなかった。忘れ得ぬ作品。2020/05/24
天の川
59
豊かな才能を持ちながらも、アウシュビッツのガス室で命を絶たれた一人の女性の生涯。偶然に彼女の作品展に出会い、その作品の持つ熱量に魅了された作者は、散文詩のような文章でしか彼女の生涯を書けなかったという。ユダヤ人たちへの締め付けがホロコーストへと変わっていく。ナチの手から逃れるために送り出された南仏。愛と切り離され、死に魅入られた血が自らに流れていることを知り…狂気と孤独の中で創造することが生きることに結びついていく。彼女の自伝的な作品「人生?それとも舞台?」を全て観てみたいと切に思った。2021/04/03
ケイトKATE
38
初めて本を開いた時、全ての文章が一行で統一されているのに驚いた。小説というより長編詩の文体と一気に読ませる語り口から、茨木のり子の「りゅうりぇんれんの物語」を彷彿とさせる。主人公のシャルロッテは実在したユダヤ系ドイツ人女性で、母、叔母、祖母が自殺するという不幸な家系に苛まれ、ナチスのユダヤ人弾圧の恐怖の中で絵を描き続けた。やがて26歳の時、ナチスに捕まりアウシュヴィッツに送られ悲劇的な最期を遂げるが、苦しみを振り払うように絵を描き続けたシャルロッテの人生は鮮烈な印象を与えた。2020/08/03