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出版社内容情報
スイスの片田舎に暮らす一家のささやかな日常を詩的で圧縮された表現で描く。現代スイスを代表する作家の代表的三篇を集めた初の邦訳
内容説明
スイスの片田舎に暮らす人々のささやかな日常を、詩的かつ圧縮された表現で描く。現代スイスを代表する作家による珠玉の三篇、本邦初訳。ヘルマン・ヘッセ賞、スイス・シラー財団賞受賞作を収録。
著者等紹介
メルツ,クラウス[メルツ,クラウス] [Merz,Klaus]
1945年スイス、アールガウ州アーラウ生まれ。1967年に出版した処女詩集で高い評価を得た後、次々に詩を発表。80年代後半まで教職に就き、小・中学校の教員、高等専門学校の講師などを務めるかたわら創作を続ける。1975年の短篇小説『必修トレーニング』以後、散文にも手を初め、小説のほか、詩、戯曲、児童書、絵画や写真に関するエッセイ等、多岐にわたる執筆活動を展開。1997年『ヤーコプは眠っている』でヘルマン・ヘッセ賞、2005年には『ペーター・ターラーの失踪』でスイス・シラー財団賞を受賞
松下たえ子[マツシタタエコ]
長野県生まれ。ベルリン自由大学文学博士号取得。成蹊大学元教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miyu
39
去りゆき、そしてまた舞い戻る。私たちはそれを繰り返す。不可思議で許しがたいことでも、そこにはそれなりの理由があるのだから。どんなに愛していても、どれほど大事に想っていても、互いの全てを理解することなどできない。たぶん自分にも解っていないことなのだ。愛されることはこの上もない悦びだ。なのに人のそんな気持ちに応えるのが辛いときもある。自分らしく生きたいのに叶わず、息苦しくなり、誰にも黙ってそっと姿を消したくなる。それなのに独りになり安らかな心で想うのもまた、捨ててきた愛する人のこと。不思議だがとてもよかった。2017/10/19
ヘラジカ
27
現代スイス文学を代表する作家クラウス・メルツの短編集。読む前はタイトルの「至福」と「烙印」という言葉の組み合わせにそぐわない感じを受けたが、これは原題に忠実な翻訳。最初の「ヤーコプは眠っている」を読んで、この違和感は感銘へと変わった。過酷ながら平凡でありきたりな人生や環境を、詩的な表現によって靄がかった幻想的なものへと変貌させた作品。訳者の「祝祭的な瞬間がここかしこに立ち上がる」という表現通り、丹念に読み込むことによって行間に浮かぶ幸福感を味わう作品なのだろう。(2017・48 )2017/07/28
おおた
26
モノクロ油絵の挿絵はゼーバルト、文体はクレストブックスぽさを一見感じさせるけれども、静かで静謐ではない現実を隠して、古いモノクロ写真集を眺めているような、語られない背景を隠した物語。感情的な言葉がほとんど使われないのは、語り手の周囲が障害者や重篤な病人だったりして、世界を恨む言葉も持たないのかもしれない。P.197をはじめとした野心的かつ丁寧な翻訳も特筆すべき。「詩的」と一言で片付けられない世界の広がりを体験できる希有な一冊です。2017/12/10
星落秋風五丈原
17
文章が詩みたいと思ったら詩集も出してらっしゃるんですね。2020/06/29
きゅー
16
ペシミスティックな中に叙情性が漂う3篇の物語。「ヤーコプは眠っている」は生後間もなく亡くなった兄ヤーコプと、水頭症の弟の間に生まれたぼくの物語。不幸以外が起こり得ない物語だが、読後に暗いものは残さない。冬の寒い日に静かに、静かに太陽が昇るように、心に開かれていくもの。それが至福の烙印。残る2篇も同様に雰囲気は暗い。彼らはどこかが欠落している。或いは、世界との触れ合いに馴染むことが出来ない。物語は暗さの中を進んでいくが、それは誰かが、何かが悪かったからではない。だからこそ恢復できないのかもしれないが。2018/03/23
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