出版社内容情報
1950年代前半、アイルランドの田舎から大都会ブルックリンへ移民した少女の感動と成長の物語。コスタ文学賞受賞!
【著者紹介】
1955年生まれ。アイルランドの作家。『ヒース燃ゆ』でアンコール賞、The Masterでブッカー賞最終候補、IMPACダブリン文学賞、ロサンゼルス・タイムズ・ノベル・オブ・ザ・イヤーなどを受賞した。本書『ブルックリン』は(ウィットブレッド賞改め)コスタ賞を受賞。
内容説明
1950年代前半、アイルランドの田舎から大都会ブルックリンへ移住した少女の感動と成長の物語。船出、奮闘、恋愛、そして思わぬ事件と結末が…。コスタ小説賞受賞作品。
著者等紹介
トビーン,コルム[トビーン,コルム][T´oib´in,Colm]
1955年、アイルランド南東部ウェックスフォード州のエニスコーシー生まれ。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで歴史と英文学を学び、卒業直後、バルセロナへ渡って英語学校で教える。その後南米へ渡り、アルゼンチンなどで暮らす。この間、ジャーナリストとして活動し、早い時期から自分が同性愛者であることを公にしている。80年代後半に最初の小説The Southを書き、1990年に出版する
栩木伸明[トチギノブアキ]
1958年東京生まれ。上智大学大学院博士課程単位取得退学。早稲田大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
81
今年のアカデミー賞にノミネートされた映画の原作。日本の映画公開は今年7月。主人公はアイルランドの田舎町から単身NYのブルックリンへ仕事を探しにきた少女アイリーシュ。慣れない土地で、耳慣れないアクセントを聞き、ミセス・キーホーの下宿屋で暮らす。昼間はデパートの店員、夜はブルックリン・カレッジで簿記と会計事務を学ぶ。仕事と資格修得に苦労しNY生活にも慣れたころイタリア系の移民トニーと恋に落ちる。そんなとき、アイルランドの母親から届いた姉の訃報。郷里に一時帰国すると、そこに待ち受けていた新しい出会い。1950年2016/01/17
紅はこべ
80
真面目なヒロインだな。ダンスパーティーでの出会いが恋のきっかけって、恋愛ものの王道路線。ロミジュリ、アンナ・カレーニナ、高慢と偏見…。 男2人が恋敵の存在を知らない三角関係ってもやもやするね。ブルックリンでは善意が、アイルランドでは悪意がアイリーシュの背中を押す。アイリーシュがトニーもジムも心から愛しているように思えないんだけど。姦通小説のヒロインの前ふりみたいな感じだ。2016/10/21
藤月はな(灯れ松明の火)
80
シアーシャ・ローナンさんが主演の映画の原作。アイルランド生まれの主人公の名前がアイリーシュなのがギャグっぽいが、線の細そうなのに意外とタフだし、女の子独特の狡さを持っているのが等身大。また、百貨店での黒人差別、コミュニティ内での出身や階級別差別、ホロコーストへの亡命というアメリカの事象もサラッと描かれているのも時代故か。自由と緊張(アメリカ)か義務と安心(アイルランド)は誰もが通る道。しかし、アイリーシュの母の「さよならはこれしか言わない」という言葉はいずれはのしかかるだろう。その時まであなたの人生を歩め2016/06/02
巨峰
76
こうなった今でも日本は豊かな国で日本に仕事を探しにくる外国人は多い。逆は少ないだろう。だから、そういう海外で職を得ようとする人々の気持ちはなかなか想像できない。この小説の主人公は1950年代ヨーロッパでも貧しい国だったアイルランドの少女。地元では職に就けなかった彼女は、教会の神父のつてで荒れる大西洋を渡りアメリカでの生活をはじめる。小説のはじめから5分の4はまさに母国を離れたこの少女の青春小説として瑞々しく描かれていて素晴らしい。(だけど、残りの5分の1の展開はあまりすきじゃないなぁ。何故そうなるのか)2016/10/25
りつこ
40
読んだ方の感想をチラ見して、きっと好きだろうと思ってはいたけれど、やはりとっても好みだった。アイルランドの小説は独特だなぁ。この繊細さとドライな感じが大好きだ。主人アイリーシュの魅力的なこと!デリケートで正義感があって生真面目だけど案外チャッカリしててるところも憎めない。故郷とブルックリンの間で立ちつくす彼女が切なくもあり微笑ましくもある。こんな繊細な物語をこんなコワモテなおじさんが書いたのか。出会えて良かった!2012/09/13