出版社内容情報
「平和の玩具」「セルノグラツの狼」他、奇想と残酷なユーモアの作家サキの没後に編集された短篇集を完訳。挿絵エドワード・ゴーリー
内容説明
子供には武器のおもちゃや兵隊人形ではなく平和的な玩具を、という記事に感化された母親が早速それを実践にうつすが…「平和の玩具」。その城には一族の者が死ぬとき近隣の狼が集まって一晩中吠えたてるという伝説があった…「セルノグラツの狼」他、全33篇。ショートショートの異才サキの没後出版の短篇集を初の完訳。
著者等紹介
サキ[SAKI]
1870‐1916。本名ヘクター・ヒュー・マンロー。英領ビルマで生まれる。インド警察勤務の後、1902年から1908年まで新聞の特派記者として欧州各地に赴任。その後ロンドンに戻り、辛辣な諷刺とウィットに富んだ短篇小説を「サキ」の筆名で新聞各紙に発表。第一次世界大戦が勃発すると志願兵として出征、フランスの西部戦線で戦死した
和爾桃子[ワニモモコ]
慶應義塾大学中退、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
91
岩波文庫所収の作品が結構あった。サキはつくづく婦人参政権運動が嫌いね。ユーモアがなければ、ちょっと嫌な気分になったかも。会話で話を進めるのが巧み。「ルイーズ」とか。アンファンテリブルも定番。英国の子供は天使じゃない。「浮かばれぬ魂の肖像」は異色。サキの詩的な面が。2017/08/03
HANA
65
サキ没後にまとめられた短編集。とはいえサキらしさは満載。表題作のキリスト教徒には数匹のライオンが付き物っていう記述で思わず吹き出すとあとは一気呵成。「七つのクリーマー」や「クリスピーナ・アムバーリーの失踪」「マッピン展示」はオチがひたすら楽しいし、「贖罪」と「モールヴェラ」には「シュレドニ・ヴィシタール」同様、子供たちの無垢な恐ろしさが存分に詰まっている。チェスタトンによる序文や親族の語るサキと資料も十分だし。何よりもサキを読むときの何とも形容しがたい笑みを浮かべれるだけで、本書を読む価値はあると思う。2017/06/23
帽子を編みます
62
サキはちびちび味わうのがよろしいと思います。私だったらベッドの棚に置いて置きたいです。この短編集、いくつかは目にした覚えがあります。「お茶」結婚は勢いがないと駄目です、何年付き合っても結婚しようと思えない相手とするよりはよろしいかと思います。それに素晴らしい茶器が揃っていたら「お湯はいかが、クリームの種類は?」と女主人ごっこをしたくなるのが人情でしょう。憎らしいこどもがたくさん出てきます、「ヒヤシンス」います!こういう子。お近づきにはなりたくないです。サキの生い立ち、家族、あの姉が一緒にいる生活はキツイ。2021/12/26
こばまり
48
以前韓国の方に「兵役を終えたお笑い芸人は一様に面白さが半減する」と聞いたことがあったが、如何なサキに於いても戦地で書かれたものは窮屈で面白くない。例え志願したとはいえ。巻末の資料は作家のミステリアスな人となりが垣間見れて興味深かった。レビュワー諸氏に倣い私は「セルノグラツの狼」に一票。サキ生誕祭読書会に参加して読了。2017/12/23
星落秋風五丈原
34
1916年、一兵卒として第一次大戦の西部戦線にいたサキは敵弾に斃れた。その3年後、姉エセルの意を受けて編まれた短篇集の初の完訳。四角い卵 (サキ・コレクション)と収録作がかぶる。チェスタトンによるサキの概略が巻頭。サキの生涯を述べた序文を書いたのはG・K・チェスタトン。付録として、オックスフォード大学図書館が所蔵するサキ及び近親者の書簡を収録。2017/07/16