内容説明
仕事が終わって大方の記者たちが引き揚げた夜明けの新聞社の編集室。一人の記者がペンを走らせる…。短編小説の名手、グルニエが自らの記者体験をもとに描く、事件の陰にひそむ様々な人間像。
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
74
お気に入りの方のレビューに惹かれ読む。10作品収録の短編集。あらすじだけ追えばブラックユーモア的な作品が多いが、そんな風に纏める気にはとてもなれない、静かでしっとりとした短編集。軽妙な描写の奥に、著者が記者として抱えざるを得なかった不安や恐怖、悔恨が横たわっているような、底知れぬものを感じる。それでいて、優しく穏やかな眼差しに包まれているような不思議な温もりもある。一番好きなのは「冬の旅」だが、決して諦念に覆われることはない、この作品での眼差しが、他作品にも通底しているのかもしれない。とても良かった。2022/11/15
マリリン
53
華やかさはないが、新聞記者でもある著者が生きてきた軌跡を感じる、心に沁みる短編10作品。全作品の根底に冬と死の影があるが、暗さはなく諦念に似た静けさと可笑しさを感じる独特な世界。菩提樹を聴きながら再読したくなる「冬の旅」、コミカルな中にも哀愁を湛えた「親愛なる奥様…」、この厄払い悪くないなと思わせる息のあったコンビが演じる「厄払い」、「少し色あせたブロンド女」は上手く言葉で表現できないけれど、妙に惹かれた作品だった。共読本が多いお気に入りさんのレビューを読み手にしたが、感じ方が全く異なるもの面白かった。2022/12/30
seacalf
20
トレヴァーが多くの人に愛されるなら、グルニエにも日の目を見てほしい。そう思っての再読。やはり素晴らしい。トレヴァー同様、明るい話はひとつも出てこないのに、みょうに惹き付けてやまない文章がそこにある。読んでいると、忘れていた部屋にポッとあかりが灯った感覚。派手ではないが、じわじわと居心地の良さに包まれる。そんな体験をしたい方に、ぜひ一度グルニエの作品を読んで頂きたい。
ぞしま
13
「冬季オリンピック」がすごくよかった。 訳者は、山田稔のイメージがあったけど、須藤さんの訳も好みだな。グルニエ愛も感じられる。2021/07/06
algon
12
元新聞記者の著者が著わす短編集。事績の仕事をしてきただけに作風はストーリーとしての起承転結はほとんど無い。話の盛り上がりもほぼ無い。登場して話が流れ続き結果が出て終わり。著者の結論も情緒的感想も無し、まぁ「編集室」である。解説はその手法はチェーホフ的面もあるとしているが。読んでいる間はどう動いていくのかの興味で読むのだが芸を読んでいる感は薄く殺獏な感の方が強くて印象がすぐ流れてしまった。10篇集だったが気になる女との接触を描いた「少し色あせたブロンド女」、破滅型の記者を書いた「冬季オリンピック」が印象的。2023/07/30
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- 和書
- 父の帽子 講談社文芸文庫