出版社内容情報
絵の細部に異常なこだわりを見せる漫画家、中世の城に展開する王と王妃の確執、呪われた画家の運命。俗世を離れてさまよう魂の美しくも戦慄的な高揚を描くピュリッツァー賞作家の中篇小説集。
内容説明
細部に異常なこだわりを見せる漫画家、中世の城に展開する王と王妃の悲劇的な確執、20世紀初頭のアメリカの呪われた画家の運命。俗世を離れてさまよう魂の美しくも戦慄的な高揚を描く珠玉の中篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
197
難解な小説である。一見したところでは、それぞれが独立しているように見える3つの中篇が『三つの小さな王国』というタイトルで括られている。3つの小説は、それぞれにきわめて個性的である。中では一番普通だと思われる「フランクリン・ペインの小さな王国」でさえも、あえて1920年代のニューヨークを舞台に選ぶ理由がわからない。訳者の柴田元幸氏が、解説で3作の共通点、統一感について述べているが、どうもすっきりしない。ただ、「フランクリン…」の持つ、どこかありえないような夢幻性という指摘はまさにそうだと思う。2015/04/12
藤月はな(灯れ松明の火)
82
「フランクリン・ペリンの王国」はウォールト・ディズニー氏とも取れるセル画アニメーションの祖である彼が見た月夜での玩具屋の情景は『魔法の夜』を彷彿とさせられる。一方で彼が去っていた皆と見た映画は実は彼の走燈馬にも思える。「展覧会のカタログ」は展示されている(だろう)絵にその絵に纏わる創り手の人生が語られるが、四角関係の帰結は余りにも陰惨過ぎるものだった。そして最後に唐突にある者の死が語られる事に唖然とする。しかし、その者と四角関係にいた人物たちの関係性を振り返るとある可能性に背筋が凍りつきそうになる。2017/11/12
コットン
78
『私が選ぶ幻想文学ベスト3(海外編)』イベントでのnadjaさんのおすすめ本で3編からなる中編小説集。中でも『J・フランクリン・ペインの小さな王国』が良い:子供に語りながらアニメーション漫画作成に心ごと填まり込んでいくかのような描写が面白い。いろいろあっての三角関係(四角関係?)とアニメーションの完成で幕を閉じる。2021/07/30
zirou1984
20
市井の漫画家について描いた正統な物語、中世の物語について物語るメタ構造的な物語、実在しない画家の架空の展覧会の解説文という実験的な手法による物語という3作を収めた中編集。いずれの作品でも揺れる人間関係を緻密に描いているが、やはり注目すべきなのはその芸術論についてだろう。本作に出てくる漫画・物語・絵画という3つの芸術に共通するのは丁寧な人間関係の描写とは対極の「輪郭の曖昧さ」であり、それは逆説的に小説の形式の可能性を浮かび挙がらせようとしている。3作目はやや難解さが目立つものの、それ以外の2作は楽しめた。2013/03/28
さっちゃん
14
ここにおさめられている3つの話は、それぞれ夢の中のように夢幻性に満ちている。その夢は緻密に描き込まれ、魔法の絨毯のように私をミルハウザーの世界へと連れ去る。これは子どものためのおとぎ世界ではない。おとなのための物語だ。2015/04/22
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