出版社内容情報
ブルワー=リットンやミドルトンの幽霊譚、コナン・ドイルの恐怖譚、スティーヴンソンの戦慄譚、レ・ファニュの薬剤幻覚譚、サキの深層心理譚、ウェルズの呪い噺、キプリングの変身譚など、イギリス幻想文学のお家芸ともいえるテーマに絞った極めつきの作品12篇のアンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
79
少し前にフランス篇を読みましたが、それよりももう少しすっきりとした感じがありました。由良君美さんの編纂・解説で訳されているのもあります。由良さんが訳を依頼したようで好みがかなり偏っている感じがしました。それでも幻想小説と怪奇小説が混在していてかなり楽しめます。私は由良さんの訳した「スレド二・ヴァシュタール」、レ・ファニュの「緑茶」ロセッティの「林檎の谷」が好みです。2022/12/19
藤月はな(灯れ松明の火)
54
幻想小説というより、怪奇小説のアンソロジー。ロセッティの「林檎の谷」はロマン情緒溢れる中でヒヤリとした死の狭間の空気を感じられ、読み終った時は鳥肌が立ちました。大好きなサキの「スレドニー・ヴァシュタール」は訳文が今まで読んだ中でもかなり、独特だったので面食らうことになりました。「われはかく身中の虫を退治せん」は高圧的な父に育てられてきた私からはニヤリとできる終わり方でスッキリしました(黒笑)2015/04/11
水零
25
ホラーと幻想系が半々くらいな短編集。翻訳物をあまり読み慣れていない私にとっては、やや読みにくい話もあったけど、概ね楽しめた。お気に入りのホラーは幽霊と人間が一緒に暮らしている『幽霊船』。幽霊がぶどう酒を飲んで酔っ払ったり、村の少女が死んだ恋人が戻ってきたと喜んだりと、ホラーなのに可笑しみがあり、なんだか可愛い。幻想系では、女が差し出す林檎を受け取ると死ぬと噂される『林檎の谷』。死の恐怖さえも凌駕する女の魅力と抗えぬ男の虚しさは、例え相手が幽霊であっても変わらない。美女は生きてても死んでても恐ろしい…2020/08/22
竜王五代の人
5
サキ・コリア・ウェルズなど豪華メンバー。多少は合わないのもあったけど、ミドルトンの、幽霊が日常風景と化している村にやって来た呑気な幽霊船の話や、死を幻想するロセッティ「林檎の谷」がよかった。コリアのは起きた怪奇現象よりも、息子を意固地に小馬鹿にする父親の態度のほうが怖かった。デ・ラ・メアの「樹」は難解。弟はなぜあの樹を切ってしまったのか。2024/07/10
まふ
5
由良氏の編著ではあるが、解説などで久しぶりに由良節を読んだ。全12編の短編幻想小説。最も面白かったのがドイルの「サノックス卿夫人秘話」で、バルザックの短編「グランド・ブルテーシュ奇譚」によく似た設定であった。ほかはキプリングの「獣の印」がよく出来ていた。2019/11/19
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- 和書
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