感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
17
人を愛することはむなしいことではない。ただ、愛することを知ることは、自分という存在がいかに孤独であるかを浮き彫りにすることでもある。登場人物のジェンダー、容姿、さらには町の建物までがいびつにねじれ曲がったこの表題作において語られる彼らの愛もまた、自らのなかにある孤独がねじれ曲がって変形したものであるのかもしれない。自己完結していた人間が、誰かを愛し、受け入れられようとして自らを変形させ、裏切られる。彼らはそのいびつな自己と暴かれた孤独を抱えながら、時間の荒波の中へ、藻屑となって飲み込まれていく。2013/10/06
Y2K☮
14
初マッカラーズ。ある時代のアメリカ文学そのもの。全体的に一番近いと感じたのはレイモンド・カーヴァー。「騎手」はヘミングウェイにおける闘牛士を連想させた。白眉はやはり表題作。平凡な日常がもうすでに危うい何かに浸食されている。そこで事件が起き、じわじわと臨界点に近づいてやがて爆発。でも一見何でもないが確実に壊れている各人への著者の視点はどこか優しい(何度も云うけど芸術家は弱者の友!)。片思いのトライアングルも切ない。「天才少女」はピアニストになり損ねた著者の魂の叫び。人生変える程の挫折が傑作文学を生む皮肉。2015/01/23
paluko
8
翻訳講座の課題を収録している関係で。表題作の、ミス・アメリアの家の描写、生活の細部の描写がすごくよかった。「天才少女」「マダム・ジレンスキーとフィンランドの王様」も好き。……ということはマッカラーズ、自分的に「当たり」の作家なのでは?2019/10/05
宮永沙織
3
大好きな本。うらびれた酒場を経営する男勝りの女主人が愛する者と、女主人を愛する者。歪な三角関係と小さな町で起こる噂話。人を愛するという事は自分を変容させ、新しい孤独を知り、そして傷つくけれど、後に残るのは絶望ではなく優しさだと思える作品。2013/10/18
読書家さん#lfJKjP
2
カーソンマッカラーズの短編で色々と味のある作品でした。個人的には心は孤独なく狩人や結婚式のメンバーが好きですがこれはこれで良かったです。映画の愛すれど心さびしく最高ですね。2022/03/14