出版社内容情報
ニーチェ発狂直前に書かれた最晩年の作品。力への意志を生の原理として捉え、神なき近代精神の本質を追求する。落日の前の白熱した輝きを放つその特異な自己表現は、世界文学史上においても例がない。幻の書『権力への意志』構想中に書かれた両著は、ニーチェ理解には欠かせぬ著作である。
内容説明
ニーチェは単なる理念や論理ではない。また体系的な理性ではない。感覚、本能、生命の肯定、いってみれば健康な生命の表層を貧欲にくりかえし擁護しているが、それでも擁護が沸き出てくるところは、けっして表層ではなくて、深い無意識の地層からのようにおもえる。
目次
偶像の黄昏 あるいはいかに鉄槌をもって哲学するか(箴言と矢;ソクラテスの問題;哲学における「理性」;いかにして「真の世界」がついに作り話となったか;反自然としての道徳;四つの大きな錯誤;人類の「改良家」たち;ドイツ人に欠けているもの;ある反時代的人間の逍遙;私が古人に負うているもの;鉄槌は語る)
アンチクリスト―キリスト教呪誼(アンチクリスト;キリスト教に反抗する法律)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
大道寺
5
学生の時に買った本を再読。偶像の黄昏についてはあまり言うことはないかな……。アンチクリストはタイトルからして入って行き易い。「なんで反キリストなの?」って大きな問いを抱いて進めるので。仏教やマヌ法典との比較を通じたキリスト教批判を見ると、ここでニーチェは反宗教ではなく反キリストということを強く言っていることがわかる。たぶん、「現実」を見るべきで宗教自体ないに越したことはないのだが人間の生を促進する限りにおいて「神聖な嘘」として認めるというのが、ニーチェの考えなのではないだろうか。(1/4)2012/01/11
有沢翔治@文芸同人誌配布中
4
ニーチェの問題意識は西欧の近代文化の批判……というと生易しいものになってしまいますが、徹底的に、ディスりまくりです。 例えば、「偶像の黄昏」では『ソクラテスの弁明』におけるソクラテスの態度をキリスト教的だとして(曲解もいいところ!)批判していますし、「アンチクリスト」ではキリスト教徒はただの神経症患者にすぎない、としています。ここまでくると痛快ですね。https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51399651.html2013/07/30
レートー・タト
4
デ・グロイター版に依拠した白水社のニーチェ全集より、西尾幹二による『偶像の黄昏』と『アンチクリスト』の訳を再収録した本。前半の『偶像の黄昏』が「ですます調」で、何か講義然としている文体である。それが気にならなければ、ちくま学芸文庫の原佑訳より読みやすい。『アンチクリスト』において伏字にされ、隠蔽されていた数箇所(イエスに対し「白痴」と呼んだところなど)がそのまま訳されており、また「キリスト教に反抗する律法」も最後にそのまま載せられている(ちくま版では訳註にあるものの、隠したあとのままである)。2011/10/07
ULTRA LUCKY SEVEN
3
最高!偶像の黄昏は今なら副題の『人はいかにしてハンマーを持って哲学するか』の方がかっこいい。序文からいきなり胸をつかまれ、箴言と矢で心にそのままズギュン!ドゥルーズも憧れたがここまでグッと来る哲学書を書いた人はいないと思う。地味であるが主著だ。善悪やツァラよりこっちを進めます。吉本隆明の解説はちょっとズレてる感じ。2012/03/05
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2
『反キリスト』: ニーチェ最晩年. イエスの死後, イエスを不合理な形で解釈した者によってキリスト教は成立したという点でのキリスト教批判であり, イエスに対してはむしろ共感を抱いている. 論の組み立て方や表現の激しさも秀逸で, ニーチェの著作の中でも傑作に属するように思う. 「パウロの創造せるごとき神は, 神の否定なり」2014/01/13