内容説明
「現代社会への転形期」と評される両大戦間期(1920~30年代)、農業・農村・農民は肥大化する市場や国家(農業政策)、社会の変化に対応し、「時代への適応能力」や「柔軟性」をどのように獲得しようとしたか。人々に指針を示した農業・農村論や諸運動、むらにおける協調・協力の諸相と併せ浮き彫りにする。
目次
第1章 「土地と自由」―「農地」に関する理念と提唱(土地の社会化論;町村自治、産業組合への期待)
第2章 小農経営「合理化」の提唱(「乳と蜜の流れる郷」―賀川豊彦の所論;「興村行脚三十年」―山崎延吉のみた理想の農業;産業組合主義経済組織論―千石興太郎の所論)
第3章 「農村文化」の提唱―生活への視点(「生活価値の意識」の提唱―山崎延吉の農村生活改善論;「安固快適生活主義」の提唱―千石興太郎の生活改善論;農村文化協会の設立―古瀬伝蔵の軌跡)
第4章 地域での「主体」形成の試み―さまざまな実践(向上社(清明社)の活動
全村学校の展開
農道講習会の開催)
著者等紹介
野本京子[ノモトキョウコ]
1951年、埼玉県生まれ。東京大学大学院農学系研究科農業経済学専攻単位取得退学。博士(農学)。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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双海(ふたみ)
11
ある本の野本氏の書評を読んで、他の本も読みたくなったので手に取ってみました。いま「生活論」を考えているんですが、その参考にしようと思います。2014/04/22
壱萬参仟縁
1
賀川豊彦は、平面農業から立体農業を提唱した。つまり、米麦繭のみではなく、果樹といった炭水化物とタンパク質を得て飢饉に備える農法を重視した(64-65ページ)。これは、現代的には多品種少量生産で、中山間農業に示唆するところが大きい。大桑村の古瀬伝蔵は『家の光』創刊(1925)に携わったというので、地元の人間からは知らなかった。生活に必要な経営を地域を現場としてどのように展開できるか。現代は、一村一品運動の一長一短も聞かれるが、6次産業の考察にも必要な発想は含まれている。2012/09/08