出版社内容情報
精神医学に根強く残る「本質主義」――表面的な事象の背後に「もっと本質的なもの」が存在する――への根本的批判。
第1章 「固有名詞」へのこだわり──カプグラ症候群をめぐって
第2章 DSM論争への密かな参戦──疾患名をめぐって
第3章 本質主義の弊害──「心の理論」とスティグマ
第4章 大通りで多元主義を提唱する
第5章 精神医学の科学なのか?
第6章 「価値」の海へ
【著者紹介】
京都大学大学院医学研究科精神医学
内容説明
「本質」という虚構を乗り越える―精神医学において、専門家が「もっと本質的なもの」があると思い込んでいる表面的な事象の背後には、実は何もない。「多元主義」への道を拓く意欲的論考。
目次
第1章 固有名詞へのこだわり―カプグラ症候群をめぐって
第2章 DSM論争への密かな参入―疾患名をめぐって
第3章 本質主義の弊害―「心の理論」とスティグマ
第4章 大通りで多元主義を提唱する
第5章 精神医学は科学なのか?
第6章 「価値」の海へ
著者等紹介
村井俊哉[ムライトシヤ]
1966年大阪府生まれ。京都大学大学院医学研究科修了。医学博士。マックスプランク認知神経科学研究所、京都大学医学部附属病院助手などを経て、京都大学大学院医学研究科精神医学教室教授。専門は精神医学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポカホンタス
3
著者は私より4歳下。しかし考えることは私とは随分違う。確実に一世代のずれを感じる。著者から見れば、私は古い考えに固執している人間に見えるだろう。しかし著者の批判の論理は、まるで脳の血流測定のテストで使用される倫理ゲームのようで、わかりやすいけれど表層的に過ぎる。テーマは早い時期から二者択一に落し込まれ、どちらを選ぶかという話になるが、そもそも前提とされる二者択一が間違っていると古参には思える。2014/07/22
文狸
1
著者自身が本書のなかで明示しているように、実践家とと理論家、精神薬理と精神病理、サイエンスと人文学、といった、精神科領域で鋭く対立してきた二項対立について、「あまのじゃく」な態度をとりながらも絶妙なバランス感覚で、それこそ「折衷主義」に陥ることなく自らの主張をクリアカットに表明する筆致がすばらしい。端的にあたまのよい人の文章だと思った。クリプキの「固定指示子」の概念を「本質のようなもの」とパラフレーズし、精神科疾患の診断およびその存在論について論じる第1-2章は見事であった。2024/02/26
ぴーまん
1
明晰。2019/08/28
Asakura Arata
1
久しぶりに精神病理学の本を読んだ。小難しいわりには、スリリングでないなあ。小さくかしこまっている感じ。飲み会なんかでこの類いの話をされたひには、酒が不味くなりそう。2014/09/19