内容説明
「聖娼」は、キリスト教以前の母権的宗教の大母神の神殿において、「女神の化身である人間の女性が、肉体と魂の交歓を呼び起こすため」に、その神殿に詣でる男性と交わる役を果たすのである。考えてみると、現代人は性と霊性を極端に分離しながら、そのどちらも失ってしまい、前者の取り戻しに焦るあまり、空しい性ハントを繰り返しているのではなかろうか。本書には、「聖娼」の内的体験を重ねることによって、それまで空虚に感じられていた人生を豊かなものにしていった、いろいろな例があげてある。
目次
序章 聖娼のイメージを求めて
第1章 女神とその処女
第2章 聖娼の心理学的な意味
第3章 男性心理のなかの聖娼
第4章 女性心理のなかの聖娼
第5章 魂の再生
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YúKa(ユーカ)@ハガレン読み終えました
14
「女性性を見直す」「精神と肉体/性と霊性のつながりを取り戻す」という着眼点は確かに評価できる。だけど、内容的に難点がたくさん。西洋(+α)ばかりで他の地域については何も書いておらず、フレイザーの『金枝篇』やジョーゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』のような、ヨーロッパ世界だけでなくアジア、アフリカ、アメリカ先住民などに及ぶ、縦横無尽の引用ゆえの厚みや重みがない。「ああ、この本は(父性原理がことさら強い)欧米向けなんだな」と読んでいて思った。概念ばかり長々と書いていて、わかりやすい実例がほとんどない。2016/12/10
Gotoran
8
西洋キリスト教の歴史で、聖と性の二分化が生じる以前の時代に、聖と性はどのように一つであったか?女性の性(聖)は何故に貶められたのか?ユング派の女性分析家(著者)が読み解いていく。聖娼にまつわる歴史的背景や神話の数々、女神について、聖娼の心理学的な意味、男性心理の中の聖娼、女性心理の中の聖娼、魂の再生と順を追っての解説。夢分析事例が豊富で、随所でユング派的な解釈・思考法に触れられ、非常に興味深く読むことができた。より深く理解するためには、再読に加えて巻末参考文献に当たることが求められる。2012/04/12
不以
2
聖と性を分離しちゃったことは現代を病ませてるよねって話。古代シュメールの聖娼や処女マリアとマグダラマリアのパートは結構興味深く読めたが、ユングユングした夢診断話には少々疲れた。2013/05/18
pskaede
1
フェミニスト系ユング派アナリスト、ナンシー・クォールズ・コルベットによる女性性に関するエッセイ。 邦訳が極端に少ないが、同系統のフェミニスト系/神秘主義系ユンギアンによる書籍は北米で多少出ているらしい。
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