出版社内容情報
日本の漁業の生産量・生産額はこの30年減り続けている。魚の消費量もこの20年右肩下がりだ。漁業の未来への活路はあるのか。
内容説明
まぐろ、サーモン、うなぎ…好きなときに好きなだけ食べたい!漁業・水産業に立ちはだかる難問、アポリアに迫る。
目次
漁獲量はなぜ減ったのか:マイワシ・バブル
規制改革:サバのIQ
漁業権:桃浦牡蛎の陣
所得向上に大義はあるか:漁業者という資源
外国人労働者:敵か味方か
魚市場の謎:車海老の製品差別化
生物多様性:ご当地サーモンがやってきた
資源ナショナリズム:マグロは誰のものか
SDGs:太平洋島嶼国はカツオ海道
絶滅危惧種:ウナギの親子市場と外部不経済
肉と魚:消費者の魚離れ
魚あら:ゴミを宝に
成長産業化:スマート漁業への期待
著者等紹介
山下東子[ヤマシタハルコ]
1957年大阪生まれ。1980年同志社大学経済学部卒業。1984年シカゴ大学大学院経済学研究科修士取得。1992年早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(学術)広島大学。明海大学経済学部教授、大東文化大学経済学部教授等を経て、現在、大東文化大学経済学部特任教授。この間、水産政策審議会会長、総合海洋政策本部参与、千葉海区漁業調整委員会委員等を務め、現在、国土審議会離島振興対策分科会特別委員等を務める。2019年度水産功績者表彰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
2
ふむ2024/06/10
お抹茶
1
経済学の考え方を使ってさまざまなトピックを解説。経済学が生き生きしている。和食ブームで日本産の魚の輸出が伸び漁価が高くなると国内供給量は減少する。農林水産省は国民への水産物の供給と輸出振興という矛盾した政策を推進。安価な外国人労働力があると労働生産性を向上させるための資本投資の意欲が削がれる。豊洲市場での活車海老のように財が転売不可能で売り手に市場支配力がある場合,卸売業者が消費者余剰を獲得する。太平洋小島嶼国ではEEZ内で獲る権利を漁業国に与え,入漁料収入を得る。消費者の魚離れの経済学的検討も興味深い。2024/09/17
ビッグマックツトム
0
アポリアとはギリシャ語で、解決の糸口が見出だせない難問。 水産業のアポリアが多岐に渡り示され、解決の糸口を作者の専門である水産経済学の知見から手繰り寄せる。 改めて、水産業は不確実な要素が多く、あらゆる問題が複雑に絡みあっていると再確認出来た。しかし、未来永劫、世界で水産物は食べられる訳でそこに人間がどう関わっていくべきか現在知り得る問題点を細分化し、作者お手製のグラフや学者らしからぬ心地良い物言いで簡潔に表現してある。 魚のアラを再利用する技術や愛媛大学のスマというマグロ近似種の養殖に期待。 2024/11/02
しまちゃん
0
漁業はこの30年というもの、生産量・生産額も就業者数も右肩下がりだ。漁業者や漁船が高齢化・高船齢化しており、輸入量や消費量もこの20年低下し続け「買い負け」とか「魚離れ」に直面している。漁業も魚食も、もはやオワコン(終わったコンテンツ)なのだろうかで、始まる本。漁獲の8割がTAC(漁獲可能量)下に。水産業は日本のオランダ病…資源が豊富な国がそれを輸出することで国際収支が黒字化し、為替レートが切り上げられ、資源以外の貿易財の国際競争力が低下し、他の生産部門の縮小と失業を招く。漁業のアポリア(難問)に挑む。2024/10/17
ダックだ
0
学者先生の著作らしく、どちらかというと研究論文的内容が多く感じる。経済的な部分をほりさげるというより、業界全体の問題点や深い部分にも言及しているため、幅を広げすぎて、焦点がぼやけてしまっている感じがします。おそらくもっと専門的な部分も多かったような感じがしますが、そこは編集段階においてわかりやすさを優先し、かみ砕いた文章に変えているような印象を受けるので一般的には読みやすいとは思います。ただ、闇深い部分に切り込めばそれだけで一冊の本が出来上がるとは思う。そういった部分に焦点を当てている方が食指は動きます。2024/08/08