内容説明
現代日本のミステリは、民主主義とネット・ファシズムの狭間で引き裂かれながら、新しい社会のあり方、人間のあり方、倫理のあり方、論理のあり方を模索している。読者の欲望と社会のあり方とが骨絡みになったジャンルであるからこそ、ミステリがそのジャンルそのものによって価値を持つ状況になっている。本書は現代ミステリからポスト・トゥルース時代を理解し、ポスト・トゥルース時代から現代ミステリを理解する。一挙両得な新たな試みの批評書である。
目次
1 現代ミステリ=架空政府文学論(前提―ネット社会と現実世界の二重政府状態;実作)
2 サイバーミステリ―対抗的技術人と、世俗化の戦略(対抗的技術人としての探偵;主体の変容と、世俗化の戦略)
3 メタミステリの新戦略―「読者」と「書物」の意識化(読者を告発する―深水黎一郎『最後のトリック』;流通のメタフィクション―三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』 ほか)
4 ドナルド・トランプvsスティーヴン・キング
5 主体の変容と、現代ミステリの危機(「体現」から、「対応」、「対抗」へ;足の速いゾンビと、現代ミステリの危機)
著者等紹介
藤田直哉[フジタナオヤ]
1983年札幌生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻修了。博士(学術)。批評家。二松学舎大学、和光大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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