内容説明
「残業代ゼロ」という捉え方は正しいのだろうか。「儀式」化した三六協定に、なお存在意義はあるのか?割増賃金は本当に労働者の役に立っているのか?理想を求めた現行制度と現実とのゆがみを解消する新たな道を探る。
目次
第1章 労働時間は、なぜ規制されるべきなのか?
第2章 日本の労働時間規制は、どのようなものか?
第3章 日本の労働時間規制は、労働者の健康保護に役立ってきたのだろうか?
第4章 欧米の労働時間法制は、日本とどう違っているのだろうか?
第5章 日本の労働時間規制のどこに問題があるのか?
第6章 日本人にヴァカンスは似合わない?
第7章 労働時間制度改革論は、何を議論してきたのか?
第8章 新たな労働時間制度に向けての提言
著者等紹介
大内伸哉[オオウチシンヤ]
1963年生まれ。1995年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。現在、神戸大学大学院法学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
75
労働基準法において長時間労働は賃金でペナルティをかけられていて(割増賃金)、労働時間そのものにはかけられていない。「特別条項つきの三六協定」を労使自治で決めてしまえば、労働時間は青天井になる。筆者は労働時間の絶対的上限を法律で強行的に決めてしまおうという意見。むしろ労使自治で決めるのは割増賃金の方。2015/08/21
壱萬参仟縁
29
健康保護と文化生活保護(14頁~)。割増賃金があると、長時間労働をすれば、賃金が増加する。これが長時間労働に対する報酬としての意味を持つことを示している。日本では、ライフをワークより重視する価値観は少数派であった。割増賃金制度は長時間労働の促進要因(190頁)。一方では、NEET、ひきこもり、SNEPがいる中で、長時間労働で疲弊する者もいる。堪え切れなくなって、人身事故になる。恐ろしい国だねぇ。2015/11/03
シュラフ
22
アベノミクスで"働き方改革"が言われており、労働問題について今後議論の活発化が予想される。我が身の問題として"働き方"というものを考えるヒントとなる一冊。筆者は、成果型労働者のホワイトカラー・エグゼンプションによる残業代ゼロの合理性を主張している。労働問題に関するひとつの主張として理解するも、現行労働法の考え方をベースとしたミクロ的論理展開には限界があると感じた。ミクロの理屈がマクロで正となるとは限らない。特に労働問題というのは我々の生活に大きく影響するものなのだからマクロ的議論から入るべきであろう。2016/08/14
koji
6
成長戦略の一環として働き方をめぐる議論、中でも法律の専門家でも難しい「労働時間」概念は、往々にして誤解や思い込みが横行しやすい分野です。そうした中気鋭の労働法学者がタイムリーに本書を刊行してくれました。日本のみならず、欧米の法制にも言及しており、類書にない厚みがあります。特にホワイトカラーエグゼンプションのあり方はを頁を割き説得力もあります。私は、多様な働き方に応じた柔軟で、かつ創造性の高い担い手が十分力を発揮できる労働時間規制の在り方を地道に作り上げることが重要と考えています。その点で著者に賛同します。2015/06/07
makio37
4
推進派の一冊。三六協定と割増賃金を軸とする日本の労働時間規制の問題点を知ることができる。それを踏まえ最終章ではまず新たな労働時間制度(規制)が提案される。労働時間の「絶対的上限」・深夜労働者の「絶対的上限」・連続11時間の休息・週休・年休を保障した上で割増賃金の重要性を低めるというもので、ここまでは賛成できる。しかし、この新たな規制の適用除外とできる「負の外部性」の小さな労働者がどれだけいるだろうか?労働時間規制を再構築する中での理論的帰結というが、あまりに現実離れしているように思う。 2016/08/16
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