出版社内容情報
複素解析学は,数学においては不可欠な知識であることはもちろん,理工系の各分野のほか,経済学等においても必要な基本的知識である。本書は,複素解析学の基本的な概念の理解と計算技術の養成を目指したものである。したがって,複素解析学全般を解説するのではなく,複素数の導入から留数解析までに限定して,理工学の基本的な問題解決に応用できるように書かれている。予備知識として微分積分学を仮定しており,それで本書は十分に理解できる。実数を変数とする関数の微分積分の考えを複素変数の関数に拡張し,複素微分・複素積分の概念を導入することによって,実解析の範囲ではできなかった事柄,あるいは非常に困難な多くの重要事項を複素数の世界で考えることにより,関数の性質が,より明らかに見えてくるところに複素解析学の特長がある。
本書の第1章では,複素数の表現,四則,一次変換の簡単な性質,複素数平面上の集合の性質,さらに複素数列・複素級数の収束・発散について述べる。第2章では,複素関数の連続性,複素関数列の一様収束等を述べ,さらに初等関数の定義および性質を述べる。第3章では,複素微分を述べ,複素微分可能であることと,コーシー・リーマンの関係式が成り立つこととは同値であることを示し,正則関数を等角写像として捉えることができることを示す。第4章では,複素積分に関するコーシーの積分定理を示し,そこから導かれる一連の定理を与える。第5章では,ローラン級数展開をとりあげ,留数定理を用いた実定積文の計算に習熟することを目標とする。さらに,付録として,留数定理から導かれる諸定理を述べた。これらは理論的にも,応用上も重要なものであるが,これは本書が講義用教科書として書いたものであるという制約によるものである。なお,各節の終わりには多数の問題をあげ,演習書としても使えるように配慮している。
平成1999年1月
著者一同
第1章 複素数
1. 複素数と複素平面
2. ド・モアブルの公式,2項方程式の解法
3. 複素数列,級数
4. 複素平面上の点集合
第2章 複素関数
1. 複素関数
2. 極限と連続
3. 初等関数
4. 関数列・級数の収束
3章 複素微分
1. 複素微分
2. 正則関数とコーシー・リーマンの関係式
3. 等角写像
第4章 積分法
1. 線積分,複素積分
2. コーシーの積分定理
3. テーラー展開
第5章 有理型関数
1. ローラン展開
2. 留数
3. 実積分の計算Ⅰ
4. 実積分の計算Ⅱ
付録
Ⅰ 部分分数展開
Ⅱ 零点の個数
Ⅲ ガウスの和
別冊 「複素解析学」解答
内容説明
複素解析学は、数学においては不可欠な知識であることはもちろん、理工系の各分野のほか、経済学等においても必要な基本的知識である。本書は、複素解析学の基本的な概念の理解と計算技術の養成を目指したものである。したがって、複素解析学全般を解説するのではなく、複素数の導入から留数解析までに限定して、理工学の基本的な問題解決に応用できるように書かれている。予備知識として微分積分学を仮定しており、それで本書は十分に理解できる。
目次
第1章 複素数
第2章 複素関数
第3章 微分法
第4章 積分法
第5章 有理型関数