出版社内容情報
最近、私たちの身のまわりに無線通信を利用するシステムが急速に普及しはじめてきた。コードレス電話や携帯電話、無線LANなどの移動体通信、また人の移動を補佐するカーナビゲーションシステムなどである。最近話題のこれら移動体システムに共通して登場する言葉に「スペクトラム拡散通信」がある。
従来の一般的な無線伝送方式では通信が困難であるような状況において、スペクトラム拡散方式はその真価を発揮する。そのため、この通信方式は軍事的要請のもとに研究され発展してきた経緯がある。ところが近年、移動体通信の分野においてスペクトラム拡散通信方式のもつ特徴が大きく評価され、現代の移動体無線通信における救世主的役割を果たすようになってきている。
本書は、現代の無線通信システムにおける基幹技術に成長したスペクトラム拡散通信方式について、その特徴や原理をできるだけ平易に解説するよう心がけて執筆したものである。初版脱稿後7年近い歳月が経ち、スペクトラム拡散通信技術を取り巻く状況は一変し、携帯電話や無線LANなどの分野で主役の位置を不動のものにした感がある。
今般、出版社のご好意により改訂版執筆の機会に恵まれた。改訂版ではCDMA携帯電話方式に関する説明を加え、工科系大学の学生および無線通信に関係した初級技術者を対象として、さまざまな通信システムの動作を物理的・直感的に理解できるよう工夫して全体を見直した。
本書が無線通信技術の発展にわずかでも貢献できれば幸いである。
第1章 スぺクトラム拡散通信の基礎知識
1.1 スぺクトラム拡散通信とは
1.2 SS方式のきわだった特徴
[1]変調信号の秘匿性
[2]妨害波・干渉波排除能力
[3]CDMA
[4]測距能力
1.3 周波数の有効利用とSS方式
1.4 実用化への問題点
[1]同期捕捉と同期追跡
[2]遠近問題
[3]拡散符号系列
1.5 法的規制
第2章 歴史的経緯
2.1 レーター技術
2.2 秘匿性の追求と妨害波排除
2.3 究極のナビゲーションシステムヘ
2.4 移動体通信環境への適用
第3章 狭帯域変調方式の概要
3.1 アナログ変調とディジタル変調
3.2 AMとASK
3.3 ASK信号の受信
3.4 FSK
3.5 PSK
3.6 DPSK
3.7 誤り率特性
3.8 QPSK
第4章 DS方式
4.1 DS方式の原理
[1]送信系の構成
[2]生成信号のスペクトラム
[3]受信機の構成
[4]拡散-逆拡散の意味
4.2 PN系列
4.3 干渉波の排除
[1]狭帯域干渉波特性
[2]広帯域干渉波特性
[3]DS方式が最も嫌う干渉波
4.4 多元接続の可能性
4.5 潜在的加入者と過負荷特性
4.6 周波数利用効率を上げる
[1]誤り訂正符号による方法
[2]直交多値変調による方法
[3]同時接続数をさらに増す
第5章 FH方式
5.1 FH方式の原理
[1]FHの原理とホッピングシンセサイザ
[2]受信機
[3]干渉波の影響と除去
[4]SFHとFFH
5.2 FH方式か想定する干渉波
5.3 ホッピンクパターンと多元接続
5.4 ハイブリッドFH/DS方式
第6章 SS変調のための符号
6.1 相関値と相関関数
6.2 M系列
[1]M系列の性質
[2]M系列の自己相関関数とスペクトラム分布
[3]相互相関関数
[4]非M系列
6.3 Gold符号系列
6.4 多値系列
6.5 FH方式に適した拡散系列
第7章 同期捕捉と追跡
7.1 同期確立の問題
7.2 DS方式における同期捕捉
[1]Serial Search Acquisition
[2]Matched Filtering
7.3 非M系列による影響
7.4 DS方式における同期追跡
[1]Delay Locked Loop
[2]Tau Ditber Loop
7.5 FH方式の同期措捉・追跡
[1]捕捉回路
[2]追跡回路
第8章 移動体通信環境でのスぺクトラム拡散通信
8.1 移動体通信環境
[1]マルチパス
[2]フェージング
[3]波形ひずみ
[4]コヒーレント帯域幅
[5]フラットフェージングと周波数選択性フェージング
8.2 代表的なフェージンク対策
[1]空間ダイバシティ
[2]アダプティブアレイアンテナ
[3]適応自動等化
[4]各方式の有効性
[5]マルチキャリア
8.3 FH方式の適用と効果
[1]高速FHによるフェージング性質の変化
[2]通信品質の均一化
8.4 DS方式の適用と効果第9章 スペクトラム拡散方式の応用
第9章 スペクトラム拡散方式の応用
9.1 携帯電話システムヘの応用
[1]アナログ式自動車電話・携帯電話からの出発
[2]ディジタル化への流れ
[3]米国のディジタル化
[4]CDMAシステムの登場
9.2 cdmaOne方式の信号形式概説
[1]ダウンリンク方向の信号構成
[2]アップリンク方向の信号構成
[3]ウォルシュ関数
[4]相互干渉を抑えるための工夫
[5]システムの可用性を高める工夫
9.3 IMT-2000
9.4 無線LANシステムヘの応用
[1]RCR STD-33とARIB STD-T66
[2]IEEE802.11
[3]IEEE802.11b
9.5 測位システムヘの応用
参考文献
索 引
[一
-
- 和書
- 中学super理科事典