出版社内容情報
筆者の所属する学科は元電気通信工学科であったが,数年前情報通信工学科と名称変更した。それに伴うカリキュラム変更の一環として,従来それぞれ半年科目として取り扱ってきたアンテナ工学および電波伝搬工学を一本化して,半年で講義することになった。
そこで,これに対するテキストを作成するため,電波伝搬工学を担当していただいてきた加来信之氏と相談し,本書をまとめることとした。執筆するに当たって取り決めた事項は次のとおりである。
(1) 平面電磁波,線路等の基礎知識を有する方を対象とする。
(2) 1章を1回分の講義に対応させる。
(3) 15回の講義回数を想定し,15章構成とする。
(4) 前半8章をアンテナに当て,三輪が執筆する。
(5) 後半7章を電波伝搬に当て,加来が執筆する。
(6) 1章は10ページとし,概要,内容,問題から構成する。
(7) 内容は3~4節構成とし,1節は原則2ページとする。
(8) 節は左側に説明,右側にこれに対応する図面を配置する。
(9) 図面が少ない場合は解説,例題等を掲載する。
(10) 問題は1章当たり3問程度とし,ヒントまたは解答をつける。
アンテナについては,電波放射の基本,アンテナの諸特性,代表的なアンテナの説明の3点に重点をおいた。章構成の考え方は次のとおりである。
1章では高周波電流が電波の発生源であることを述べ,したがって磁流,変位電流も発生源に成り得ることを示す。2章ではアンテナの基本素子である微小ダイポールが作る電磁界とその解釈を述べる。
3章では,アンテナの指向性,放射する電力および放射抵抗,インピーダンス,4章では利得と放射効率,可逆性,受信アンテナとして用いた場合の可逆性,実効面積等の諸特性を解説する。
5章では電流が発生源となる線条アンテナについて,6章では磁流アンテナとみなすことのできる各種アンテナを取り上げる。7章では矩形,円形開口面アンテナについて,8章ではアレーアンテナを解説する。
電波伝搬では,電波の伝搬形態,それらの形態を引き起こす大地・建物・大気・電離層等が及ぼす影響,応用面で起きる伝搬の3点に重点をおいた。
9章では周辺の影響を受けない自由空間内の電波伝搬を取り上げ,フリスの伝達公式に到る。10章では,反射,屈折,回折,散乱という基本的な電波伝搬形態について述べ,レーダ方程式を誘導する。
11章では大地・建物等が電波伝搬に及ぼす現象を解説する。まず大地による反射の影響,干渉パターンについて,次いで障害物による遮蔽,多重波伝搬について述べる。12章では大気による屈折およびその結果現れる地球等価半径,電離層の及ぼす影響について説明する。
13章では地上固定通信,14章は衛星通信,15章では移動通信における伝搬について述べる。これらの応用分野において,それまでに述べた種々の電波伝搬の現象がどのように現れるかを示す。
本書を執筆するに当たっては,特に次の書籍を参考にさせていただいた。各著者に対し深く感謝する次第である。
1. 虫明康人:アンテナ・電波伝搬,コロナ社,1985
2. 虫明康人,安達三郎:電波工学例題演習,コロナ社,1980
3. 内田英成,虫明康人:超短波空中線,生産技術センター,1977
4. 後藤尚久:図説・アンテナ,電子情報通信学会,1966
5. 後藤尚久:アンテナの科学,講談社,1987
6. 後藤尚久,新井宏之:電波工学,昭晃堂,1992
7. 雨宮好文:電磁波工学,オーム社,1985
8. 藤本京平:移動通信用アンテナシステム,総合電子出版社,1996
9. 藤本京平:入門・電波応用,共立出版,1993
10. 若井登:電波ってなあに,電気通信振興会,1987
11. 進士昌明:無線通信の電波伝搬,電子情報通信学会,1992
12. 奥村善久,進士昌明:移動通信の基礎,電子情報通信学会,1995
13. 秋山忠:電波伝ぱん入門,オーム社,1964
14. 黒川廣二,渋谷茂一:マイクロウェーブ伝搬解説,コロナ社,1972
15. 榎本肇,関口利男:電波工学,オーム社,1973
16. 榛葉実,進士昌明:電波応用工学,オーム社,1986
17. 飯田尚志編著:衛星通信,オーム社,1997
18. 椎村和宣:博士論文,1990
19. 唐沢好男:電子情報通信学会論文誌,Vol.79.No4,1992
20. 三垣充彦:電子情報通信学会論文誌,Vol.J75-B-Ⅱ,No1,1992
なお,本書の刊行に当たっては,東京電機大学出版局植村課長,編集に当たっては工学部齋藤剛教授に種々懇切なご指導をいただいた。あわせてお礼申し上げる。
1999年7月
著者しるす
1 電波の発生
1.1 高周波電流が電波発生源
1.2 磁流も発生源
1.3 変位電流も
1.4 発生源の作る電磁界
章末問題1
2 微小ダイポール
2.1 微小ダイポールの作る電磁界
2.2 電磁界の解釈
2.3 放射電磁界
章末問題2
3 アンテナの特性-1-
3.1 放射指向性-1
3.2 放射指向性-2
3.3 放射電力と放射抵抗
3.4 入力インピーダンス
章末問題3
4 アンテナの特性-2-
4.1 利得と放射効率
4.2 実効長,実効高
4.3 可逆性と受信アンテナ
4.4 実効面積
章末問題4
5 線条アンテナ
5.1 ダイポールアンテナの指向性
5.2 ダイポールアンテナのインピーダンス
5.3 モノポールアンテナ
5.4 超短波全方向性アンテナ
章末問題5
6 磁流アンテナ
6.1 微小ループアンテナ
6.2 1波長ループアンテナ
6.3 スロットアンテナ
6.4 マイクロストリップアンテナ
章末問題6
7 開口面アンテナ
7.1 矩形開口面アンテナ
7.2 円形開口面アンテナ
7.3 各種パラボラアンテナ
章末問題7
8 アレーアンテナ
8.1 インピーダンス・指向性
8.2 八木・宇田アンテナ
8.3 全方向性アレー
8.4 平面アレーアンテナ,電子走査アンテナ
章末問題8
9 自由空間内の電波伝搬
9.1 無指向性アンテナによる放射電力
9.2 利得Gのアンテナによる放射電力
9.3 受信有効電力
9.4 電力の伝達
章末問題9
10 いろいろな電波伝搬形態
10.1 反射
10.2 屈折
10.3 回折
10.4 散乱
章末問題10
11 大地・建物の影響
11.1 大地による反射の影響
11.2 干渉パターン
11.3 障害物による遮蔽
11.4 多重波伝搬
章末問題11
12 大気・電離層の影響
12.1 大気による屈折
12.2 大気の屈折指数
12.3 地球等価半径
12.4 電離層の影響
章末問題12
13 地上固定通信における伝搬
13.1 晴天大気による伝搬変動
13.2 降雨による伝搬変動
13.3 山岳回折
13.4 対流圏散乱
章末問題13
14 衛星通信における伝搬
14.1 周波数による伝搬特性
14.2 衛星通信における使用周波数
14.3 固定衛星通信における伝搬変動
14.3 移動体衛星通信における伝搬変動
章末問題14
15 移動通信における伝搬
15.1 受信レベル変動
15.2 遅延特性
15.3 ダイバーシティ方式
15.4 特殊環境下の伝搬
章末問題15
付録
A.1 電磁波スペクトル
A.2 主要定数
A.3 量記号および単位記号
A.4 ベクトル公式
A.5 座標系別ベクトル表示
A.6 三角関数・双曲線関数
A.7 ベッセル関数
A.8 確率密度関数
A.9 単位の名称(接頭語)
A.10 ギリシャ文字
索引
内容説明
本書は、アンテナ工学および電波伝搬工学を一本化したテキストである。アンテナについては、電波放射の基本、アンテナの諸特性、代表的なアンテナの説明の3点に重点をおき、電波伝搬では、電波の伝搬形態、それらの形態を引き起こす大地・建物・大気・電離層等が及ぼす影響、応用面で起きる伝搬の3点に重点をおいた。
目次
電波の発生
微小ダイポール
アンテナの特性
線条アンテナ
磁流アンテナ
開口面アンテナ
アレーアンテナ
自由空間内の電波伝搬
いろいろな電波伝搬形態
大地・建物の影響〔ほか〕
-
- 和書
- 塑性加工学 (改訂版)