内容説明
公案と南無阿弥陀仏の深奥処。禅における「看話工夫」と浄土教における「称名念仏」を考察し、表面的に全く異なる両者が心理面において根本的に同一なることを明かす。新世紀に継承すべき名著復刊。
目次
知識を超えたる経験
禅に於ける悟の意義
悟の主要なる特徴
公案制度発生前に於ける悟の心理的先行条件―実例数項
禅経験を決定する諸要因
心理的先行条件と禅経験の内容
禅史初期に於ける禅的修行の技術
公案の発生とその意義
看話工夫に関する実際上の諸教訓
看話工夫に関する諸種の一般的叙述〔ほか〕
感想・レビュー
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roughfractus02
8
W・ジェイムズ『宗教的経験の諸相』を意識して書かれた本書は、宗教性の本質を、各宗教各宗派の教義を超えた宗教家自身の神秘体験に置く。それゆえ禅の宗教性に迫ろうとする本書は、神秘体験に対して心理学的検討を試みる。禅における神秘体験=悟りは非合理性、直角的瞥見、権威性、肯定、彼岸意識、非人格、高揚感、瞬間性という特徴があるとされる。更にそれが悟りであると決定する要因は、知の限界への到達、工夫、師の指導が必要とされる。一方、著者はこれらの要因が心理学自体に収まらないとも考えており、伝法の歴史的な変遷を加えている。2021/03/14