出版社内容情報
《内容》 本書は著者がコメディカルの教育に携わった経験をもとにこれらの学生・卒業者のために必要にして十分な内科学の知識を箇条書きと図表を中心にコンパクトにまとめたものである.随所に「メモ」を挿入して知識を補強するとともに最新の知識も紹介している.
コメディカルスタッフの教育が重視され,多くの大学・学校が発足している折,教育の現場で活用できる最適のテキストである.
監修にあたって
埼玉県立大学は保健医療福祉学部として,この分野の重要な構成員である看護・理学療法・作業療法および社会福祉士(精神保健福祉士PSWを含む)を総合的に教育する役目をもって,1999年4月1日にスタートしたばかりの新しい大学です.
この大学のキャッチフレーズは2つあります.
1)あたたかい心と確かな技術
・心だけで技術がなければ役に立たない
・心のこもらない技術はロボットになってしまう
2)連携と統合
・医療は複雑なシステムの中で多様な職種によって成り立っている
このような理念に基づいた教育プログラムを効果的に進めるために,様々な形で智恵を出しています.その中で,重要な役割を果たすのは教材です.
北村 諭教授はこれら,コメディカルの学生教育のためのテキストとして既に「これだけで十分 コメディカルの医学概論」を上梓されておりますが,今回,引き続いて「これだけで十分 コメディカルの内科学」を執筆していただきました.限られた時間の中で,学生が学ぶ上で必要にして十分な内容を整理,とりまとめておられます.今日,コメディカル スタッフの教育が社会的にも重要視されて,多くの大学が発足しています.このテキストが多くの教育の現場で活用され,さらには将来の発展の基礎とされることを願うものであります.
2002年5月
埼玉県立大学 学長 北川定謙
序文
1999年3月に,私は,14年間勤務した自治医科大学呼吸器内科教授の職を辞し,その年に新設された埼玉県立大学保健医療福祉学部教授に就任しました.
私が一年間にわたり講義した内容を軸にして,昨年「コメディカルの医学概論」を出版する事が出来ました.
昨年の5月にサンフランシスコで国際会議が開催され,私の愛弟子である旧医局員達と学会に出席しました.その時に,一つ皆で力を合わせて,本当に役立つコメディカルのための内科学の教科書を作成しようという話がまとまりました.
コメディカルの教科書としては,看護学生のためのものは巷にあふれています.それらをみてみますと,内容が余りにも専門的で,医科大学の学生の教科書としても十分に役立つような立派なものばかりでした.
本当にコメディカルに必要なものは,恐らく,これらの教科書の内容の50%程度ではないかと思われます.
そこで本書では,コメディカルの学生・卒業生のために,必要にして充分な内科学の知識を箇条書きにして,出来るだけコンパクトにまとめることにしました.また,必要な所には,メモを適宜入れさせて頂きました.また,最新の医学の進歩も紹介するように務めました.
本書が,コメディカルの方々,コメディカルを目指す学生の皆さんの座右の書として,お役に立つものと確信する次第であります.
2002年5月
著者を代表して 北村 諭
《目次》
第1部 内科学総論 〈北村 諭〉
1章 内科概論 2
1.内科学と,その進歩 2
2.老化,加齢と疾病 2
3.遺伝と疾患 3
4.炎 症 3
5.内科診断学 3
6.治療学 3
2章 循環器疾患 7
1.構造と機能 7
2.大循環,小循環 10
3.主要な臨床症状 11
4.循環器疾患の検査 12
3章 腎疾患,水電解質代謝 14
1.構造と機能 14
2.主要症状 15
3.腎疾患の検査 16
4章 呼吸器疾患 17
1.構造と機能 17
2.主要症状 19
3.呼吸器疾患の検査 22
5章 消化管疾患 24
1.構造と機能 24
2.主要症状 26
3.消化管疾患の検査 28
6章 肝・胆・膵疾患 29
1.肝臓の構造 29
2.肝臓の機能 30
3.肝機能障害(肝不全)による症状 30
4.胆管・胆嚢の構造と機能 31
5.肝臓・胆嚢疾患の検査 32
6.膵臓の構造と機能 33
7.膵臓疾患の検査 34
7章 血液・造血器疾患 35
1.血液の組成と機能 35
2.主要症状 36
3.血液疾患の検査 38
8章 代謝性疾患 39
1.糖質代謝 39
2.蛋白質の代謝 39
3.脂質の代謝 40
4.ビタミン 40
5.電解質(無機質) 41
6.代謝性疾患の検査 41
9章 内分泌疾患 43
1.内分泌腺の種類・作用機序 43
2.視床下部 44
3.下垂体 45
4.甲状腺 45
5.副甲状腺 45
6.副 腎 46
7.性 腺 46
8.内分泌疾患の検査 46
10章 感染症,寄生虫疾患 47
1.感染・感染症の成立 47
2.病原体の感染経路 47
3.感染症の臓器別分類 48
4.新興感染症 48
5.感染症の臨床症状 48
6.感染症の臨床検査 49
7.寄生虫症 49
11章 中毒性疾患 50
1.中毒の定義・分類 50
2.中毒の発生頻度 50
3.中毒患者の診断・評価 50
4.中毒の治療法 51
12章 神経疾患 52
1.構造と機能 52
2.神経疾患の症状 54
3.神経疾患の検査 59
13章 膠原病 60
1.膠原病とは 60
2.膠原病の種類 60
3.膠原病の症状・検査所見 61
4.免疫血清検査所見 62
第2部 内科学各論
1章 循環器疾患……〈坂東政司〉64
1.高血圧症 64
2.虚血性心疾患 68
1)狭心症 68
2)心筋梗塞 70
3.不整脈 71
1)心房細動・粗動 76
2)心室性期外収縮 77
3)上室性頻拍 79
4)心室性頻拍 80
5)心室細動 81
6)房室ブロック 81
7)洞不全症候群 82
4.心弁膜性疾患 82
1)僧帽弁狭窄症 83
2)僧帽弁閉鎖不全症 83
3)大動脈閉鎖不全症 84
5.先天性心疾患 84
1)心房中隔欠損症 84
2)心室中隔欠損症 85
6.心筋疾患 85
1)特発性心筋症 86
2)心筋炎 86
7.心膜の疾患 86
8.大動脈疾患 87
1)大動脈瘤 87
2)解離性大動脈瘤 87
9.末梢血管疾患 88
2章 腎臓・泌尿器疾患……〈坂東政司〉90
1.腎不全 90
1)急性腎不全 91
2)慢性腎不全 92
2.糸球体の疾患 96
1)急性腎炎症候群 96
2)持続性蛋白尿・血尿症候群 99
3)慢性腎炎症候群 99
4)ネフローゼ症候群 104
5)急性進行性腎炎症候群 110
3.尿細管の疾患 110
●尿細管アシドーシス 111
4.間質性腎炎 111
5.全身性疾患による腎障害 112
1)糖尿病性腎症 112
2)ループス腎炎 112
3)腎硬化症 114
4)痛風腎 115
5)アミロイド腎 115
6)薬物による腎障害 115
6.尿路感染症 115
●腎盂腎炎 115
7.尿路結石症 116
8.その他の腎疾患 116
1)腎細胞癌 116
2)・胞性腎疾患 116
9.電解質異常 117
1)ナトリウムの異常 117
2)カリウムの異常 119
3)カルシウムの異常 120
3章 呼吸器疾患……〈北村 諭〉122
1.感染性呼吸器疾患 122
1)上気道炎,かぜ症候群 122
2)急性気管支炎 123
3)肺 炎 124
4)肺化膿症 130
5)肺結核症 131
6)肺アスペルギルス症 133
7)クリプトコッカス症 134
2.気道閉塞性疾患 135
1)慢性閉塞性肺疾患(COPD) 135
2)気管支喘息 136
3.肺血管性病変 138
●肺血栓塞栓症 138
4.腫瘍性肺疾患 139
●原発性肺癌 139
5.胸膜の疾患 141
1)胸膜炎 141
2)気 胸 141
6.塵 肺 142
1)珪肺症 142
2)石綿肺 143
7.アレルギー性肺疾患 143
●過敏性肺炎 143
4章 消化管疾患……〈坂東政司〉145
1.食道疾患 145
1)逆流性食道炎 145
2)食道裂孔ヘルニア 146
3)食道癌 147
2.胃・十二指腸疾患 148
1)急性胃炎 148
2)慢性胃炎 148
3)胃・十二指腸潰瘍 149
4)胃ポリープ 150
5)胃 癌 150
3.小腸・大腸疾患 152
1)急性腸炎 152
2)虫垂炎 153
3)腸閉塞 154
4)炎症性腸疾患 156
5)過敏性大腸症候群 159
6)大腸ポリープ 159
7)大腸癌 160
5章 肝・胆・膵疾患……〈菅間康夫〉161
1.急性肝炎 161
1)急性ウイルス性肝炎 161
2)薬物性肝炎 162
2.慢性肝炎 163
3.肝硬変 163
4.肝腫瘍 165
1)肝細胞癌 165
2)胆管癌 165
5.胆石症 166
6.胆嚢炎 168
1)急性胆嚢炎 168
2)急性化膿性胆管炎 168
7.急性膵炎 169
8.慢性膵炎 169
9.膵腫瘍(膵癌) 170
10.腹膜炎 170
6章 代謝性疾患……〈小林 淳〉172
1.肥満症 172
2.や せ 173
3.糖尿病 174
4.高脂血症 177
5.痛 風 179
6.骨粗鬆症 181
7章 内分泌疾患……〈菅間康夫〉183
1.間脳疾患 183
●神経性食思不振症 183
2.下垂体疾患 183
1)末端肥大症 183
2)下垂体前葉機能低下症 184
3)尿崩症 185
3.甲状腺疾患 185
1)甲状腺機能亢進症 185
2)甲状腺機能低下症 186
3)甲状腺腫瘍 187
4.副甲状腺疾患 187
1)原発性副甲状腺機能亢進症 187
2)副甲状腺機能低下症 188
5.副腎皮質疾患 188
1)クッシング症候群 188
2)副腎皮質機能低下症 189
3)原発性アルドステロン症 190
6.褐色細胞種 191
8章 感染症,寄生虫疾患……〈北村 諭〉192
1.ウイルス感染症 192
1)麻 疹 192
2)風 疹 192
3)水 痘 193
4)流行性耳下腺炎 193
5)インフルエンザ 194
6)AIDS(エイズ) 194
2.細菌感染症 195
1)ブドウ球菌感染症 195
2)レンサ球菌感染症 196
3)腸チフス 196
4)細菌性赤痢 197
5)破傷風 197
3.スピロヘータ感染症 198
●梅 毒 198
4.原虫症 199
1)マラリア 199
2)トキソプラズマ症 199
5.寄生虫疾患 200
1)回虫症 200
2)アニサキス症 200
9章 自己免疫疾患(膠原病)……〈坂東政司〉201
1.慢性関節リウマチ 201
2.全身性エリテマトーデス 205
3.全身性強皮症(進行性全身性硬化症) 208
4.多発(性)筋炎(皮膚筋炎) 210
5.シェーグレン症候群 212
6.混合性結合組織病(MCTD) 213
7.ベーチェット病 215
8.結節性多発動脈炎 218
10章 血液疾患……〈重永哲洋〉220
A.赤血球系の疾患 220
1.鉄欠乏性貧血 220
2.巨赤芽球性貧血 221
3.再生不良性貧血 223
●赤芽球癆 225
4.溶血性貧血 225
1)遺伝性球状赤血球症 228
2)遺伝性楕円赤血球症 228
3)発作性夜間ヘモグロビン尿症 228
4)新生児溶血性貧血 228
5)赤血球破砕症候群 229
6)自己免疫性溶血性貧血 229
B.白血球系の疾患 231
1.白血病 231
1)急性白血病 231
2)骨髄異形成症候群 233
3)慢性骨髄性白血病 234
4)骨髄増殖性疾患 235
5)真性赤血球増加症(真性多血症) 235
6)本態性血小板血症 238
7)骨髄線維症 238
2.慢性リンパ性白血病 239
1)慢性リンパ性白血病 239
2)成人T細胞白血病 240
3)無顆粒球症 240
C.リンパ網内系疾患 242
1.伝染性単核球症 242
2.悪性リンパ腫 243
1)ホジキン病 243
2)非ホジキンリンパ腫 244
3.血球貪食症候群 248
4.HIV感染とエイズ 248
D.異常蛋白血症 249
1.多発性骨髄腫 249
2.原発性マクログロブリン血症 250
3.アミロイドーシス 251
E.出血性疾患 252
1.血管異常による出血性疾患 252
●アレルギー性紫斑病(シェーンライン--ヘノッホ紫斑病) 252
2.血小板異常による出血性疾患 252
1)特発性血小板減少性紫斑病 252
2)血栓性血小板減少性紫斑病 254
3)溶血性尿毒症症候群 254
4)血小板機能異常症 255
3.凝固異常による出血性疾患 255
1)血友病 255
2)ヴォン--ヴィレブランド病 256
4.播種性血管内凝固症候群(DIC) 257
11章 神経疾患……〈小林 淳〉258
1.脳血管障害(脳梗塞,脳出血) 258
2.脳血管障害(くも膜下出血) 260
3.慢性硬膜下血腫 261
4.パーキンソン病 261
5.アルツハイマー病 263
6.脳 炎 263
7.髄膜炎 264
8.脳腫瘍 264
9.筋萎縮性側索硬化症 265
10.多発性硬化症 265
11.重症筋無力症 266
12.筋ジストロフィー 267
13.ベル麻痺 267
14.ギラン--バレー症候群 268
12章 中毒性疾患……〈重永哲洋〉269
1.バルビタール薬中毒 269
2.ベンゾジアゼピン中毒 270
3.三環系抗うつ薬中毒 271
4.サリチル酸(アスピリン)中毒 271
5.ジギタリス中毒 273
6.アセトアミノフェン中毒 274
7.その他の主な治療薬の副作用 274
8.アルコール中毒 275
9.一酸化炭素中毒 276
10.ヒ素中毒 277
11.鉛中毒 278
12.水銀中毒 281
13.カドミウム中毒 283
14.金属熱,金属フューム熱 283
15.有機溶剤中毒 283
16.その他の工業毒中毒 284
17.有機リン剤中毒 284
18.有機塩素剤中毒 286
19.パラコート中毒 287
20.タバコ中毒 289
21.サリン中毒 290
22.シアン中毒 291
23.アジ化ナトリウム 292
24.フグ中毒 293
25.中毒情報関連のインターネットホームページ 294
26.中毒110番・テレホンサービス 294
索 引 295