出版社内容情報
《内容》 本書は術前術後を中心に外科医に必要とされる輸液,栄養管理の実際を具体的で簡潔に示したベッドサイドマニュアルである.外科診療における輸液,栄養管理を疾患別,病態別,合併症別に症例,処方例をあげてすぐに実施に応用できるよう著わされている.正しい輸液,栄養管理を行うための基本的知識についても簡明に示し,また,術前術後管理に必要な薬や処置・手技の基本も盛り込んである.巻末には市販の輸液,栄養製剤の一覧を附して便を図った.序 高カロリー輸液法が本邦に導入されたのは1960年代の終りから1970年代の初めにかけてであるが,以来20年間にカテーテルや器具の改良,進歩,カテーテル挿入手技の向上,すぐれた高カロリー輸液剤の開発などにより,適応は拡大され,治療成績も著しく向上したことは周知の事実である. 私どもが安全性,確実性ということを追及した結果として“図解高カロリー輸液”(小越章平・碓井貞仁著)を出版したのは1976年のことであるが,この領域における今日の基礎的・臨床的進歩は目覚ましいものがあり,現在の高カロリー輸液法は当時のそれと全く趣を異にしているといっても過言ではない. 一方,高カロリー輸液法がいかに進歩し,普及しても臨床の現場で患者に接した時は,どのような輸液剤を用いるか,組成をどうするか,輸液量,投与速度をどのように設定するか,どの位の期間継続するか,というような基本的な問題はいささかも変わっている訳ではない.この20年間に数多くのテキストブックが出版され,それぞれが高く評価されているが,内容がいかに高度でも実践の場で手軽に参考にするにはいささか痒い所に手が届かないようなまだるっこしさがあり,もう少しシンプルな理解しやすい参考書があるといいと感じていた. このような私の思いと時期を同じくして中外医学社荻野邦義氏より,若手のドクター,ナース,薬剤師,栄養士を対象としたわかりやすい内容のテキストブックを作りたいという企画がもちこまれ,私もそのように考えていた所だったので一も二もなく賛成して実行に移すこととなった.著者には現場の第一線で活躍中で,かつしっかりとした理論をもつ指導者的立場にある経験豊富なドクターにお願いした. 当初の企画ではわかりやすく,読みやすい臨床に直結する内容で,あまりかさばらない適当な長さのものにする予定であったが,予想に反していささか内容の濃いものが出来上がった.内容が充実しているのでこれはこれでよいと考えているが,反面ポケットに入れて持ち運ぶには若干厚目で気軽に本書を参考にしてもらえるかどうか気になる所である. 出版時期が目標より大幅にずれこんでしまったことは編集者の見通しの甘さと怠慢のためであり,ご迷惑をおかけした関係諸氏にこの場を借りて陳謝したい. 本書が高カロリー輸液法に携わるドクター,ナース,薬剤師,栄養士,その他関係する皆様方になんらかの指針や示唆を与えることを期待するとともに,また信じてもいる.1995年7月碓井貞仁 《目次》 目次§1.輸液,栄養管理の基礎知識A.水分出納の計算法と補正 〈遠藤昌夫〉1 1.脱水是正のための水分平衡 1 2.禁飲食事の水分出納 3 3.手術侵襲と水分出納 4 4.異常体液喪失時の水分出納 4 5.高齢者の水分出納 5B.電解質異常とその補正 〈碓井貞仁〉8 1.電解質とは 8 2.電解質異常のチェック 8 3.電解質異常とその補正 9C.酸塩基平衡異常と補正 〈碓井貞仁〉18 1.酸塩基平衡とは 18 2.酸塩基平衡の異常 18 3.酸塩基平衡の調節 19 4.代謝性障害 20 5.呼吸性障害 23D.高血糖,低血糖とその補正 〈碓井貞仁〉26 1.定義 26 2.血糖の調節 26 3.症状 26 4.血糖検査 27 5.合併症 28 6.血糖コントロールの実際 29E.栄養評価・患者評価 〈田代亜彦,山森秀夫,高木一也,中島伸之〉31 1.身体計測 31 2.血漿蛋白濃度 34 3.尿中窒素および窒素化合物 35 4.エネルギー消費量の測定 35 5.免疫学的指標 36 6.栄養状態の総合的評価 36F.手術危険度の予測 〈高木一也,田代亜彦,山森秀夫,中島伸之〉37 1.侵襲程度の評価 38 2.術前栄養評価 38G.体液バランスと窒素平衡 〈山森秀夫,田代亜彦,高木一也,中島伸之〉41 1.体液バランス 41 2.窒素平衡 43H.間接熱量測定と投与カロリーの決め方 〈田代亜彦,山森秀夫,高木一也,中島伸之〉47 1.投与エネルギー量決定の指標 47 2.エネルギー代謝測定法 47 3.エネルギー測定の問題点 48 4.投与エネルギー量決定の実際 48I.輸液剤の種類 〈五関謹秀〉53 1.糖質 53 2.アミノ酸 54 3.脂肪乳剤 58 4.高カロリー輸液時の糖,アミノ酸,脂肪の適正な投与量 59 5.ビタミン 60 6.微量元素 63 7.輸液剤 66J.輸液の投与ルート 〈五関謹秀〉69 1.末梢静脈 69 2.中心静脈よりの輸液 72K.高カロリー輸液剤の調整 〈五関謹秀〉79 1.一日の投与量 79 2.調整に当たっての基本的な原則および注意点 80L.高カロリー輸液の投与スケジュール 〈五関謹秀〉86 1.非手術例および術前のTPN管理の投与スケジュール 86 2.術後のTPN管理の投与スケジュール 86 3.胃癌胃全摘例の術後TPN管理 87M.経腸栄養栄養管理 〈五関謹秀〉89 1.術後早期からの経腸栄養管理による消化器のホメオスターシスの回復 89 2.経腸栄養剤の種類 89 3.栄養チューブ,およびその留置部位の経腸栄養ポンプ 91N.経腸栄養の投与ルート 93 1.経腸カテーテル,チューブの種類 93 2.挿入経路 93 3.留置部位 95 4.チューブ挿入,カテーテル留置による合併症 95O.経腸栄養の投与スケジュール 〈五関謹秀〉96 1.術前の経腸栄養の投与スケジュール 96 2.術後の経腸栄養の開始時期と投与スケジュール 96 3.高度手術侵襲消化器手術後の経管栄養の実際 97 4.炎症性腸疾患のprimary therapyとしての経管栄養 102P.高カロリー輸液と経腸栄養の併用 〈五関謹秀〉103 1.IVHと経腸栄養を併用しての胸部食道癌根治症例の術後栄養管理の実際 104 2.IVHと経腸栄養を併用しての術前,術後管理の実際〔(膵頭十二指腸切除+肝切除例)の管理の実際〕 105Q.輸血の種類,適応,投与方法 〈五関謹秀〉110 1.全血輸血 110 2.成分輸血 111§2.疾患別術前術後栄養管理の実際A.食道癌 〈坂本昭雄〉115B.食道静脈瘤 〈坂本昭雄〉120C.胃十二指腸疾患 〈長尾二郎〉126D.急性腹症 〈長尾二郎〉132E.消化管出血(吐血・下血) 〈長尾二郎〉136F.炎症性腸疾患 〈畠山勝義〉139G.小腸大量切除後 146H.イレウス 〈畠山勝義〉152I.難治性下痢 〈八木雅夫〉155J.肝癌 161K.膵胆道癌 167L.急性膵炎 173M.DIC 〈長谷部正晴〉179N.外傷・熱傷 183O.新生児・乳児 〈遠藤昌夫〉189P.高齢者 〈向谷充宏,小出真二,平田公一〉196Q.ショック 〈平田公一,向谷充宏,伝野隆一〉201R.進行癌・末期癌 〈小出真二,向谷充宏,平田公一〉209§3.合併症をもつ患者の輸液栄養管理A.黄疸 〈碓井貞仁〉214B.糖尿病 〈碓井貞仁〉219C.心不全・心筋梗塞 〈長谷部正晴〉226D.意識障害 228E.呼吸器疾患(気管支喘息・呼吸不全など) 230F.肝硬変・肝機能障害 〈坂本昭雄〉232G.腎疾患 〈添田耕司〉238H.腹水 248I.脱水・血清電解質異常 256J.低栄養 〈碓井貞仁〉265§4.術後合併症発生例に対する輸液栄養管理A.肺合併症 〈坂本昭雄〉270B.術後循環不全 274C.肝不全 〈嶋田紘,遠藤格〉278D.術後膵炎 284E.消化管外瘻・縫合不全 〈坂本昭雄〉289F.重症感染症・敗血症 〈草地信也〉292§5.術前術後に必要な薬剤と使用上の留意点A.強心薬 〈福島亮治,斎藤英昭〉297B.利尿薬 300C.止血薬 303D.鎮痛薬 305E.睡眠薬 307F.下剤 309G.抗菌薬 〈草地信也〉311H.ステロイド 314§6.術前術後管理に必要な処置と基本手技A.心肺蘇生法 〈飯島一彦〉316 一次救命処置 316B.気道の確保 320 1.エアウェイの挿入法 320 2.経口的気管内挿管法 321 3.輪状甲状靱帯切開 322 4.気管切開 323C.呼吸管理(機械的人工呼吸法) 324 1.用具による人工呼吸 324 2.呼吸器による人工呼吸 324D.循環管理 327 1.血圧測定法 327 2.静脈路の確保 328 3.中心静脈圧の測定 333 4.SWAN-GANZカテーテル挿入法 334E.硬膜外カテーテルの挿入 336F.胸腔ドレナージ・持続吸引 〈尾崎正彦〉339G.腹膜穿刺・心嚢穿刺・DOUGLAS窩穿刺 342 1.腹腔穿刺 342 2.心嚢穿刺 344 3.DOUGLAS窩穿刺 346H.胃内吸引 〈武田明芳〉348I.イレウス管の挿入 350J.導尿・浣腸・注腸 353K.採血 356L.S-Bチューブの挿入 〈尾崎正彦〉358M.各種ドレーンの管理 361N.病室における画像診断 364付表 〈五関謹秀〉368 1.高カロリー基本液一覧(溶) 368 2.高カロリー基本液一覧(1L) 370 3.市販アミノ酸 372 4.高カロリーアミノ酸製剤 379 5.TPN総合輸液剤 380 6.末梢栄養輸液製剤 383 7.輸液剤組成 384 8.市販脂肪剤一覧 388 9.経腸栄養剤一覧 390 a.薬品 390 b.食品 392索引 395