出版社内容情報
《内容》 本書は,学校心臓検診にかかわる多くの基準,真安,心電図コードなどの作成に携わり,この領域の指導的立場にある著者らが,最新のスタンダードな学校心臓検診の実際を解説したものである.学校心臓検診の目的・現状から対象疾患,検診のシステムと判定基準,日常生活の事後指導,突然死の実態と予防法,救急事態の対処の仕方,関係者の役割などにわたって,図表・写真を多用して具体的に理解できるよう著した.また,関連法規,各種の基準やガイドライン,指標など必要とされる資料を巻末にまとめ便を図っている.わかりやすく実践的な手引書として関係者すべての方々に自信をもってお進めする.序 昭和48年,学校保健法施行規則が改正され,学校心臓検診を行うことが義務づけられた.義務づけられたとはいうものの,心臓検診のやりかたについては何の規定もなかった.その頃から,学校心臓検診の方法についていろいろと議論された.どのような方法で行うのがよいかが検討された.そして,それぞれの地域で,それぞれの検診システムがつくられ,それぞれの方法で学校心臓検診が行われるようになったわけである. それぞれ独自の方法で行うと,どうしても地域差がでてくる.地域によって判断の違いがでてくる.ある地域で正常と判断された例が他の地域で異常と判断されるようなことも生じてくる.また,精度の違いもででくる.このようなことを無くすために,なるべく統一した基準で学校心臓検診を行おうとする努力がなされた.つまり,いろいろな判定基準,管理基準などが作られたわけである.その結果として,学校心臓検診の方法も,時代とともに変わってきた.平成7年度からは,小1,中1,高1で心電図検診を行うことが義務づけられた. このような経緯をふまえて,現在行われている最新のスタンダードな学校心臓検診についてまとめたものが本書である.著者らは皆,永年にわたって学校心臓検診にたずさわり,現在学校心臓検診の指導的立場にある者である.今までに,多くの基準,めやす,心電図コードなどが作られたが,それらの原案は本書の著者らによるものが大部分である. 少子化の時代に入り,学校心臓検診は変わっていくであろう.高い精度と,質の向上が要求されるであろう.そのような要求に応えるために,この本がこれからの学校心臓検診に役立てば,著者らのこの上もない喜びである. 最後に,この本の出版に御尽力くださった中外医学社の荻野邦義氏,斎藤喜信氏に心から感謝する.また,資料の収集,校正に御協力いただいた東京都予防医学協会の浦清氏に感謝する. 1998年3月 原田研介 《目次》 目 次はじめに 〈本田 悳〉… 1§1 学校心臓検診―その目的と考え方〈本田 悳〉… 3 A.学校心臓検診の主たる対象疾患の変遷 … 3 1.萌芽期―リウマチ性心疾患と先天性心疾患 … 3 2.先天性心疾患と川崎病,そして不整脈 … 3 3.術後の問題と突然死 … 4 B.臓器別検診から総合健診へ … 4 1.学校保健の目標 … 4 2.臓器別検診の意義とその統合 … 4 3.分化から統合の中での心臓検診 … 5§2 学校心臓検診の現状 〈浅井利夫〉… 6 A.学校心臓検診の現状 … 6 1.小・中学校の現状について … 6 2.高等学校の現状について … 7 B.運動部員の学校心臓検診 … 9§3 どのような疾患が対象となるか 〈原田研介〉… 12 A.先天性心疾患 … 12 1.心房中隔欠損症 … 12 2.心室中隔欠損症 … 13 3.動脈管開存症 … 14 4.心内膜床欠損症 … 14 5.肺動脈弁狭窄症 … 14 6.大動脈弁狭窄症 … 15 7.Fallot四徴症 … 15 8.その他の先天性心疾患 … 15 B.後天性心疾患 … 16 1.川崎病 … 16 2.リウマチ性心臓病 … 16 3.僧帽弁逸脱症候群 … 16 4.その他 … 17 C.心筋疾患 … 17 1.心筋症 … 17 2.心筋炎 … 18 D.不整脈 … 18 E.手術後例 … 19 F.無害性雑音(機能性雑音) … 19§4 方法の実際―システムと判定基準― … 20 A.一次スクリーニング法 … 20 1.アンケート調査 … 〈北田実男〉 20 2.身体所見 … 23 3.心電図検査 … 26 4.心音図 … 〈馬場國藏〉 34 5.自動解析装置の利用について … 35 6.二次検診以降への抽出 … 36 B.二次以降の検診での対応 … 〈長嶋正實〉 64 1.胸部X線写真 … 64 2.運動負荷心電図 … 69 3.心エコー検査 … 74 4.Holter心電図 … 76 5.精密検査への抽出 … 78 C.病院での精密検査と対応 … 〈馬場國藏〉 80 1.心臓カテーテル検査 … 80 2.心臓RI検査 … 81 3.その他 … 82 4.精密検査後の抽出 … 82§5 日常生活の事後指導 〈本田 悳〉 84 A.管理指導表の書き方・見方・扱い方 … 85 1.医療面からの指導区分 … 85 2.生活規制面からの指導区分 … 85 B.医療機関の責任 … 88 C.家庭における注意点 … 89 D.学校における指導 … 89§6 システム作りと関係者の役割 〈山内邦昭〉 91 A.心臓検診の法的根拠 … 91 1.学校保健の目的 … 91 2.健康診断 … 91 3.心臓検診 … 91 4.心電図検査 … 91 5.技術的基準 … 91 6.事後措置 … 93 7.健康相談 … 93 B.学校保健における関係者の役割 … 93 1.学校長 … 94 2.養護教諭 … 94 3.保健主事 … 94 4.保健教育担当教員 … 94 5.一般教員 … 95 6.学校医 … 95 C.心臓検診のための委員会の編成と役割 … 95 1.心臓検診委員会 … 95 2.心臓検診判定委員会(判読委員会) … 96 3.学校保健委員会 … 96 D.心臓検診の流れと役割分担 … 97 1.検診実施手順と役割分担 … 97 2.事後指導の重要性とその役割分担 … 100 3.まとめ~Q~―~Q~心疾患児の健康相談と管理指導の要点 … 101§7 突然死―その実態と予防 〈原田研介〉 102 A.突然死の実態 … 102 1.発生頻度 … 102 2.男女比 … 102 3.原 因 … 102 4.発生状況 … 103 5.年齢,学年 … 103 6.時間帯 … 104 7.季 節 … 104 B.ハイリスク心疾患 … 105 1.先天性心疾患を有する児の突然死 … 105 2.心筋症による突然死 … 106 3.不整脈による突然死 … 107 4.その他の疾患 … 107 C.突然死の予防 … 108§8 救急事態の対応 〈浅井利夫〉 111 A.救急事態に対する基本的対応 … 111 B.主な救急処置を要する心症状と対応 … 111 1.チアノーゼ … 111 2.ショック … 112 3.呼吸困難 … 112 4.胸 痛 … 112 5.動悸,頻脈,徐脈 … 112 6.けいれん,失神,意識障害 … 114 7.腹痛,嘔吐 … 114 C.救急に必要な道具 … 115 D.ちょっとした知識と工夫が必要 … 115 E.心肺蘇生の方法 … 116§9 これからの学校心臓検診 〈山内邦昭〉120 A.3年ごとに心電図検査を … 120 B.総合健診の一環に … 121 C.生涯保健の中で … 122 D.個人健診として … 124資 料 … 1251.学校心臓検診の関連法規 1252.学校心臓検診調査票 1273.点数制による小児心電図心室肥大判定基準 1294.小児心電図心室肥大判定のめやす(生後30日以下は除く) 1305.学校心臓検診 二次検診対象者抽出のガイドライン一次検診の心電図所見から― 1316.学校心臓検診 二次検診対象者抽出のガイドライン一次検診の4誘導心電図所見から― 1377.小児2点心音図判読の実際 1428.心臓病管理指導表 1449.幼児用(3歳以上)心臓病管理指導表 14510.『心臓病管理指導表』の活用,(可)と(禁)の判定のめやす 14611.基礎疾患を認めない不整脈の管理基準 14812.川崎病の管理基準 151索 引 … 152
目次
1 学校心臓検診―その目的と考え方
2 学校心臓検診の現状
3 どのような疾患が対象となるか
4 方法の実際―システムと判定基準
5 日常生活の事後指導
6 システム作りと関係者の役割
7 突然死―その実態と予防
8 救急事態の対応
9 これからの学校心臓検診