出版社内容情報
《内容》 血液疾患にリンパ球がどのようにかかわっているかをビビッドにまとめた.リンパ球の種類と機能から,分化,増殖,腫瘍化・異常増殖と血液疾患・免疫学的機序による造血障害・自己免疫性血液疾患の成因・リンパ球を中心とした造血器腫瘍に対する免疫療法など興味の尽きない内容である.序 免疫学の進歩は,1)モノクローナル抗体の作製法の開発と,モノクローナル抗体を用いた抗原の解析,2)免疫遺伝子の再構成の発見,3)サイトカインの発見と,遺伝子工学を用いた組換え型サイトカインの大量生産,の3点に代表される. 血液学を免疫学的見地からみると,1)のモノクローナル抗体は造血器腫瘍の診断に必須の手段となっており,さらに造血器腫瘍の治療にも使われている.2)の免疫遺伝子の再構成は造血器腫瘍の診断に極めて有用である.3)のサイトカインは造血器腫瘍の治療や抗癌剤投与時の副作用の治療薬として急速に用いられるようになってきている. このような血液学と免疫学の流れの中で,リンパ球が血液疾患にどのように関わっているかを述べたのが本書である.まず初めに,リンパ球の種類や機能,分化,増殖について最近の知見を紹介する.次にリンパ球自体が異常に増殖するリンパ増殖性疾患について解説する.3番目にリンパ球の異常が病因と考えられる血液免疫疾患について述べる.そして最後にリンパ球を用いた抗腫瘍療法について述べる.これらのテーマに関する知見は,いずれも過去数年間に飛躍的に集積されつつあり,筆者にとっては全てをもれなくカバーするのは困難である.したがって筆者自身が専門としているリンパ増殖性疾患や造血器腫瘍の免疫療法に重点を置いて記載することをお断りする. 読者諸賢が血液学の免疫学的側面に新たな興味を持たれれば幸いである.1992年6月押味和夫 《目次》 目次I.リンパ球の種類と機能 1 A.リンパ球の種類 2 B.T細胞とは 2 C.B細胞とは 5 D.NK細胞とは 6 E.CD番号とは 8 F.サイトカインとそのレセプター 10II.リンパ球の分化,増殖と腫瘍化 15 A.血液細胞の分化,増殖と血球刺激因子 16 B.T細胞の分化,増殖と腫瘍化 16 C.B細胞の分化,増殖と腫瘍化 20 D.NK細胞の分化,増殖と腫瘍化 24III.リンパ球の異常増殖:慢性リンパ性白血病を中心に 27 A.リンパ球の増殖 28 B.CLLとその類縁疾患の分類 28 C.B-CLL 30 1.CD5+B細胞 30 2.B-CLLの発症機序 32 3.B-CLLの病期分類と治療 32 D.T-CLLと顆粒リンパ球増多症 34 1.T-CLLという疾患は存在するか 34 2.顆粒リンパ球とは 35 3.顆粒リンパ球増多症とは 36 4.GLPDの臨床像 38 5.GLPD細胞の性状 39 6.GLPDの治療 40 7.GLPDの原因・GLPD細胞の増殖機序 41 E.成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL) 42 1.原因と発症機序 42 2.症候 44 3.検査所見 46 4.診断 48 5.治療 48IV.免疫学的機序による造血障害:再生不良性貧血と赤芽球癆 49 A.免疫学的機序による再生不良性貧血の発症 50 1.再生不良性貧血とは 50 2.再生不良性貧血の発症機序 50 3.再生不良性貧血の病因として免疫が関与していることを示唆するデータ 50 4.免疫系の異常を介する造血幹細胞障害の機序に関する考察 53 5.サイトカインによる造血抑制 54 6.キラーT細胞による造血抑制 56 7.再生不良性貧血の発症機序に関する具体例 57 a.輸血後GVHD 57 b.肝炎ウイルスによる再生不良性貧血 58 c.CD3+4+8+キラーT細胞クローン 59 d.LAK細胞による造血抑制 59 e.顆粒リンパ球増多症に合併した再生不良性貧血 60 8.今後の方向 60 B.赤芽球癆の発症機序 64 1.赤芽球癆とは 64 2.PRCAの分類 64 3.PRCAの発症機序 65 4.顆粒リンパ球増多症に合併するPRCA 68V.自己免疫性血液疾患の成因とリンパ球 71 A.自己免疫性血液疾患 72 B.pure white cell aplasia(PWCA) 72 C.無巨核球性血小板減少性紫斑病(ATP) 73 D.自己免疫性骨髄異形成症 74 E.悪性貧血 75 F.自己免疫性溶血性貧血(AIHA) 76 G.自己免疫性好中球減少症 77 H.特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 78VI.造血器腫瘍に対する免疫療法:リンパ球を中心に 79 A.腫瘍抗原とは 80 B.腫瘍細胞を排除する機構 82 1.キラーT細胞 82 2.NK細胞 84 3.LAK細胞 84 4.モノクローナル抗体 86 5.モノクローナル抗体とリンパ球を併用する方法 87 C.造血器腫瘍に対するリンパ球を用いた養子免疫療法についての基礎的検討 88 1.免疫療法とは 88 2.造血器腫瘍に対する腫瘍特異的キラーT細胞の誘導 89 3.造血器腫瘍に対するNKおよびLAK活性 90 4.bispecific抗体(BsAb)による白血病細胞障害作用 91文献 95索引 109



