出版社内容情報
《内容》 最近,特定の白血病型と特異的染色体異常との関連が次々に明らかになり,今や染色体検査は血液疾患の診断に必須であり,また白血病の予後判定の重要な検査である.本書ではまず染色体各部の名称と記号,バンドの命名法,異常核型の表記法をわかり易く解説し,次に日常の臨床で比較的多く出会う血液疾患および特異的な染色体異常が確定している疾患を取り上げて,染色体異常を中心とする最新かつ重要な知見を紹介している.序1960年の慢性骨髄性白血病患者におけるフィラデルフィア染色体の発見以来,M2と8;21転座,M3と15;17転座,M4EOとinv(16)など,特定のFAB病型と特異的染色体異常との関連が次々に明らかにされてきた. また,白血病の染色体異常についての国際ワークショップや各国から集められた白血病症例のデータ解析結果などによると,染色体所見は,血液疾患の診断に際して重要なばかりではなく,白血病細胞の免疫学的所見・年齢・腫瘍細胞量などと並んで,予後判定のための重要因子であることが明らかにされている. さらに,近年の分子細胞遺伝学におけるめざましい発展とあいまって,Ph陽性白血病におけるABL遺伝子とBCR遺伝子,6;9転座におけるCAN遺伝子とDEK遺伝子,15;17転座におけるPML遺伝子とRARα遺伝子,8;21転座におけるAML-1遺伝子などの関連性が見いだされ,白血病の病態に直接関与すると思われる責任遺伝子が次々と解明されている. このように,染色体関連分野の進歩は実に目ざましく,関連文献を全て網羅することは筆者の力量をはるかに超えているが,本書では,日常の臨床の場で比較的多く出会う疾患や特異的な染色体異常が確定している疾患を取りあげて,染色体異常を中心とする最新かつ重要な知見を紹介すべく努力したつもりである.臨床や研究の場において,本書が少しでも役立つならば幸いである. 最後に,本書の執筆の機会を与えて下さった高久史磨先生,三浦恭定先生,平井久丸先生に感謝致します.1992年9月佐藤裕子 《目次》 目次I.核型表記について 1 A.染色体各部の名称と記号,およびバンドの命名法 2 B.異常核型の表記法 3 1.染色体数の異常に関する表記 3 2.染色体の構造異常に関する表記 5II.急性非リンパ性白血病 19 A.特定のFAB分類病型と関連のある染色体異常 23 1.8;21転座 23 2.15;17転座 27 3.11q23転座または11番長腕欠失 34 4.16番腕間逆位または16番長腕の欠失 38 5.9;22転座 42 6.6;9転座 44 7.3番長腕逆位 46 8.8;16転座 49 9.12p11-13転座または12番短腕欠失 49 10.4トリソミー 49 11.7;11転座 52 12.16;21転座 52 B.特定のFAB分類病型とは関連しない染色体異常 52 1.8トリソミー 53 2.7モノソミーまたは7番長腕欠失 53 3.5番長腕欠失 55 4.Y染色体欠失 56 5.1番染色体長腕トリソミー 58III.骨髄異形成症候群 59 A.疾患概念誕生までの歴史 60 B.MDSの臨床像と病態 61 C.MDSの診断基準と臨床症状 61 D.MDSの染色体異常 63 1.primary-MDSの染色体異常 65 a.7モノソミーまたは7番長腕欠失 66 b.5番長腕欠失 68 c.17番長腕同腕染色体 71 d.20番長腕欠失 72 e.1;3転座 74 2.therapy related-MDSの染色体異常 74 a.1;7転座 76IV.慢性骨髄性白血病 79 A.Ph陽性慢性骨髄性白血病(Ph+CML) 80 1.概説 80 2.臨床像 81 a.初期像 81 b.慢性期像と臨床経過 81 c.急性期像と臨床経過 83 3.治療 特に新しい治療法の方向性について 85 4.染色体所見 87 a.慢性期の染色体所見 87 1)Ph転座のいろいろ 87 2)慢性期の付加的染色体異常 92 3)Y染色体欠失 92 b.急性転化時の染色体所見 93 1)核型進化 93 2)付加的染色体異常と急転時の芽球の性状,および予後との関係 94 5.Ph陽性白血病の分子細胞遺伝学的知見 96 a.Ph+CMLにおけるPh転座 96 1)分子細胞遺伝学的に見た場合のPh転座 96 2)M-BCR内切断点と臨床像との関連 100 3)急転のメカニズムについて 100 b.急性白血病におけるPh転座 101 1)Ph陽性急性白血病の臨床経過の多様性 101 2)Ph陽性急性白血病のPh転座には2種類ある 102 3)Ph陽性急性白血病の分子細胞遺伝学的多様性 105 c.分子細胞遺伝学的知見の臨床的応用 110 B.Ph陰性慢性骨髄性白血病(Ph-CML)111 1.概説 Ph陰性CMLは存在するか 111 2.Ph陰性CMLの多様性(typical CMLとatypical CML) 111 3.Ph陰性CMLのM-BCR再構成について 112 4.typical CML,atypical CML,CMMLの鑑別点 113V.急性リンパ性白血病 115 A.構造異常をもつALL群 118 1.1;19転座 119 2.4;11転座 120 3.8;14q32転座 124 4.9;22転座 124 5.11;14q11転座 127 6.6番長腕欠失 128 7.9番短腕欠失 130 8.12番短腕欠失 132 B.数的異常をもつALL群 132 1.高2倍性ALL(染色体数〉50) 134 2.近半数性ALL(染色体数〉24~28) 134VI.慢性リンパ性白血病とその類縁疾患 137 A.B細胞性の慢性リンパ性白血病 139 1.B細胞性慢性白血病(B-CLL) 139 2.B細胞性前リンパ球性白血病(B-PLL) 142 B.T細胞性の慢性リンパ球性白血病 142 1.T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL) 144 2.成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL) 146VII.悪性リンパ腫 149 A.HODGKIN病(HD) 150 1.概説および臨床像 150 2.染色体異常 151 B.非HODGKINリンパ腫(NHL) 152 1.B細胞性非HODGKINリンパ腫(B-NHL) 155 a.8q24転座 155 b.18q21転座 161 c.11;14q32転座 164 d.その他の14q32転座 164 2.T細胞性非HODGKINリンパ腫(T-NHL)によく見られる染色体異常 166 a.8;14q11転座 168 b.10;14q11転座 168 c.11;14q11転座 169 d.inv(14)または14;14転座 169 3.その他の非HODGKINリンパ腫 169 a.Ki-1リンパ腫と2;5転座 169文献 171索引 207
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