出版社内容情報
太平洋戦争のさなか、脳性まひのもも子に心よせるふたごの兄弟たちにも戦争の影がせまって…。
内容説明
この絵本の舞台は、大阪府堺市です。1945年7月9日から10日未明の大阪堺大空襲で、なくなった人のかずは1,394人、けがをした人のかずは1,574人、その中には、家族が全部死んでしまって、だれも探してくれず、身元もわからない“ななしのごんべさん”が、たくさんいたそうです。
著者等紹介
田島征彦[タジマユキヒコ]
1940年、大阪府堺市に生まれる。高知県で少年時代を過ごす。絵本に『祇園祭』(第6回世界絵本原画展金牌受賞)、『じごくのそうべえ』(第1回絵本にっぽん賞受賞)、『はじめてふったゆき』(竹内智恵子・共作/1989年ライプチヒ国際図書デザイン展銀賞受賞/偕成社)、『てんにのぼったなまず』(第11回世界絵本原画展金牌受賞/福音館書店)がある
吉村敬子[ヨシムラケイコ]
1956年大阪に生まれる。9か月の早産で仮死分娩であった。1歳2か月の頃、脳性小児麻痺と診断される。1974年大阪市立光陽養護学校高等部卒業。1979年に京都の聖母女学院短大で児童文学講座を聴講し、今江祥智先生の指導のもとで作品を書きはじめる
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感想・レビュー
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nakanaka
70
なんという残酷さ。大阪堺大空襲を描いた絵本です。脳性麻痺により体が不自由な主人公のもも子も例外なく戦争に巻き込まれていきます。印象的だったのは戦地に息子を送る親の言葉「お国のために死んでこい」ですね。皆の手前威勢良くそんなセリフを吐きますがその心中は引き裂かれるような思いだったはず。戦争にハッピーエンドなんてありえませんね。2017/12/20
瑪瑙(サードニックス)
44
1945年、大阪府堺市を襲った大空襲。命を落とした名もなきたくさんの人々。切ない。苦しい。子供向きの絵本だけれども、その絵の迫力に圧倒される。身元のわからないご遺体を「ななしのごんべさん」と表現されていらっしゃって、本当に切ないです。皆、名前のある人たちなのに。戦争さえなければななしのごんべさんになることはなかったのに。やるせないです。2018/01/22
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
13
大阪大空襲のおはなし。身元不明の亡くなった方々を『ななしのごんべさん』と呼ばなくてはならない辛さ…。足の悪いもも子に、双子のまさるとまもるがくれた人形に「ななしのごんべさん」と名付けた。ラストの「ななしのごんべさん」だけの絵に、喉の奥が熱くなりました。2019/06/04
ヒラP@ehon.gohon
13
やさしかったおじいちゃんが、自分の息子に「立派に死んでこい」という。たべものをめぐって鬼になる。それはすべて戦争のせい。 この絵本は、それだけでなく身障者のお話でもあります。吉村敬子さんが、あの「わたしいややねん」の吉村さんだとわかったら、少し複雑でまとまりのない絵本の中のもも子の姿がとても大きく思えてきました。 大阪の街で、みんな死んでいきます。「ななしのごんべ」さんのタイトルがとても重く感じます。 戦争の悲惨さを感じるとともに、その時代にいた身障者の差別の話でもあるように思いました。 2010/01/11
いっちゃん
12
なかなか最後がきつい。「え?どうなったん?」…。戦時中にも、障害をもった子供がいたなんてあまり気にしてみたことはなかったけど、車椅子がわりのものに乗って逃げるなんて、無理に等しい。容赦ないラストが語りかけることを、精一杯小さな胸で受け止めて考えてほしい2014/11/17