出版社内容情報
本書の概要
道徳教育が「特別の教科」として位置付けられてから、まもなく10年。いじめ問題の深刻化、ICT端末の急速な普及、そしてAIとの共生が求められる社会の到来──学校現場では、道徳教育に対する期待と課題がこれまでになく交錯しています。
・道徳科の「特別の教科」化で授業はどう変わったのか
・資質・能力ベースの学びへの転換で生じた課題は何か
・全教育活動における道徳教育はどう再構築されるべきか
・「深い学び」「個別最適な学びと協働的な学び」:これからの授業はどうあるべきか
・AI時代における「人間らしさ」「道徳性」とは何か
こうした問いに向き合いながら、授業づくりの基本・教材観・発問の再考・指導と評価との一体化など、明日からの授業改善に直結する視点を豊富な実践とともに提案します。
さらに本書では、著者が提案する「タメ(溜め)」をつくる指導の在り方、他教科等の学習過程から学ぶ柔軟な発想、AIとの共生を踏まえた新たな道徳教育の方向性を描きます。加えて、オリジナル教材として新たに考案した 内容項目[義理と人情]教材『ぼくの友達』 を収録。教科調査官経験者ならではの深い洞察と、現場感覚に根ざした実践提案が融合した「道徳の次の10年」を示す一冊です。
本書からわかること
道徳教育10年の成果と課題を総点検
本書はまず、「特別の教科 道徳」開始からおよそ10年の歩みを、道徳教育実施状況調査のデータや政策文書を丁寧に読み解きながら点検します。道徳科が「量的に確保され、教科として定着してきた」こと、教師の意識の高まりや授業時間の確保、学校全体で取り組む姿勢が広がったことなどの成果の一方、多くの学校が「話合いや議論を通じて考えを深める指導」「物事を多面的・多角的に考える指導」「道徳的価値を自分との関わりで深める指導」が難しいと感じていること、評価の妥当性・信頼性の確保などが課題として挙がっています。
本書は、これらの成果と課題を踏まえて、今後の道徳教育を「量から質へ」「教科として定着させる段階から、学びの本質を問う段階へ」進めるための視点を、わかりやすく整理しています。
こんな先生におすすめ
・道徳科の授業づくりに自信をもちたい先生
・道徳教育を学校全体でどう展開するか悩んでいる管理職・道徳教育推進教師
・ICT活用・AI時代の学びに対応した道徳教育を考えたい先生
・教育委員会・指導主事・大学院生など、道徳教育政策・カリキュラム研究に関わる方
・次期学習指導要領に向けて、道徳教育の方向性を把握しておきたい方
【目次】
これからの道徳教育はどうあるべきか
はじめに 1
第1章 道徳の教科化で授業は変わったのか
1 道徳の「特別の教科」化
─後を絶たないいじめの問題への対応─ 8
2 道徳教育実施状況調査から見えてくる課題
─これからの道徳教育の充実に向けて─ 10
3 教科書教材の活用の成果と課題
─主たる教材として使用する教科書─ 22
4 内容重視から資質・能力重視への転換
─資質・能力の3つの柱に関わる道徳科の学び─ 24
5 道徳教育における評価の成果と課題
─指導と評価の一体化─ 34
第2章 全教育活動を通じて行う道徳教育はどうあるべきか
1 道徳教育のカリキュラム・マネジメント
─分かりやすい道徳教育の推進の在り方─ 42
2 学級経営に位置付けた指導
─きまりを守る子どもを育てる─ 48
3 道徳教育と道徳科でできること
─いじめの問題への対応─ 52
4 時代が変わっても変わらない指導のスタンス
─体験と座学をつなぐ道徳教育の指導の循環─ 56
第3章 道徳科の授業はどうあるべきか
1 道徳科の授業は好きですか? 嫌いですか?
─子どもたちに道徳科の学びを伝えよう─ 64
2 道徳科の指導が難しくなりました!
─道徳科の「深い学び」─ 70
3 道徳科のねらいの表記の変化
─指導と評価のズレを補う─ 74
4 道徳科の教材はどこで活用するのか?
─教材活用の柔軟な発想─ 78
5 「自分だったら」という発問の是非
─登場人物への自我関与─ 84
6 視野を広げて考える
─道徳科の多面的・多角的な見方─ 88
7 問題解決的な学習は今どこへ?
─道徳的価値に根差した問題─ 92
8 問題意識をもつために
─問題の投げかけの工夫─ 98
9 個別最適な学びと協働的な学び
─指導の個別化と学習の個性化への着目─ 102
10 他教科等の学習指導過程から学ぶ
─指導方法の柔軟な発想─ 108
11 ICT端末の活用の可能性と配慮
─子ども一人一人のよさや可能性を引き出す─ 112
12 複数時間扱いの道徳科の授業
─35時間-22項目=13時間の有効活用─ 118
13 まだ見ぬ新しい道徳科の授業へ!
─あなたにしかつくれない道徳科の授業を求めて─ 124
第4章 これからの道徳科の授業の姿を提案する
1 道徳科の授業の流れをつくる
─指導の基本形を知る─ 130
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