出版社内容情報
私たちの過去は、誰かによって語り継がれ、また書き留められることによって「歴史」として現在まで伝わっています。だが果たして真実とフィクションの境目はどこにあるのか。客観的な歴史は存在するのか?人々を楽しませるため、または惧れさせ支配するために真実に手が加えられることはなかったのか。権力者によって真実が歪められることはないのだろうか――。本書は、古代からインターネットの時代まで、膨大な数の「歴史の書き手たち」を取り上げ、彼らが生きた時代や社会背景、国家体制、職業、置かれた立場や人間関係などを分析しながらどのように歴史がつづられてきたかを追います。本書が扱うのは聖書、ヘロドトスやギボンなど古典的歴史書、シェイクスピアをはじめとする文学作品、王の偉業を織り込んだタペストリー、さらにはナポレオンなどの偉人伝、南北戦争などの戦記、個人の日記、哲学書、テレビのドキュメンタリーや人気歴史番組まで、そして「書き手」も皇帝や王など支配者、キリスト使徒、文学者、詩人、劇作家、女性の作家、哲学者、歴史研究者、政治家、ドキュメンタリー作家まで幅広い。客観的な歴史は存在するのか。都合よく歴史をつくり上げなかった国や民族は存在するのか? フェイクニュースがはびこり歴史の意義が問われる今こそ、必読の書です。
【目次】
序章 修道院外の修道士
第1章 歴史の夜明け――ヘロドトス対トゥキュディデス
第2章 ローマの栄光――ポリュビオスからスエトニウスまで
第3章 歴史と神話――聖書の創造
第4章 過去を閉じる――イスラム教の歴史観
第5章 中世の年代記作家たち――国家の物語を創造する
第6章 偶然の歴史家――ニッコロ・マキァヴェッリ
第7章 ウィリアム・シェイクスピア――歴史の劇
第8章 ゾゾと無神論者のあやつり人形――ヴォルテールとギボン
第9章 学問としての歴史――マコーリーからランケまで
第10章 昔むかしあるところに――過去の専門家としての小説家
第11章 アメリカ対アメリカ――南北戦争のさまざまなバージョン
第12章 靴と船と封蝋――アナール学派