出版社内容情報
第2回創元SF短編賞受賞作に始まる幻惑世界全4編。卓越した造語感覚と、圧倒的なイメージ喚起力を駆使して描かれる異形の未来。現代SFの到達点にして世界水準の傑作!
内容説明
高さ100メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に、“会社”は建っていた。雇用主である社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上とそれを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、日々の勤めは平穏ではない―第2回創元SF短編賞受賞の表題作にはじまる全4編。奇怪な造語に彩られた異形の未来が読者の前に立ち現れる。日本SF大賞受賞作、待望の文庫化。
著者等紹介
酉島伝法[トリシマデンポウ]
1970年大阪府生まれ。大阪美術専門学校芸術研究科卒。フリーランスのデザイナー兼イラストレーター。2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞。受賞第1作「洞の街」は第44回星雲賞日本短編部門の参考候補作となる。13年刊行の第1作品集『皆勤の徒』は『SFが読みたい!2014年版』の国内篇で第1位となり、さらに第34回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
101
あかん、これは本格的にやばいやつや。思わず関西弁になってしまうほど突き抜けた小説。小説?小説だよねこれ?解説で示されるSF的想像力の最長到達点という賛辞も納得。根本的にグロいし、エンジョイしたかって言われたら素直にうんって言えないし、そもそも文章から情景をイメージするのが困難で疲弊する。それでも読んで良かったと心から思えるのは圧倒的な未知の世界を見せてもらえたから。自宅で普通に椅子とか洗濯物とかに囲まれながら、こんな異形の別世界を創造してしまうなんて、作者にも人間の脳の可能性にもしみじみと感動してしまう。2015/08/14
翔亀
66
異様な世界が異様な言葉で構築され、「酉島語大辞典」でもなければ到底論理的には解読できないのだが、何故か溢れ出るイメージに眩暈をしながら読み進めてしまう(時間はかかった)。奇怪な異生物とか異星人が登場するからではなく、まさしく未来の人間として描かれているからだ。昆虫や芋虫もどきの粘液ぐちょぐちょの生き物に自分がなった気分になる。確固としてある筈の自分の身体と精神の基盤が崩される喪失感のような感覚。人間が進化により偶然に今の形態になったのに過ぎず、このように進化してもおかしくないということを体感できる。2016/01/08
さっとる◎
40
連綿綿綿と続く命のメインロードは遥か彼方の未来行き。そこに犇めく沢山の人人人、虫も木も犇めいて蟲になる森になる。叡智が人に翼を心臓にエンジンを。先へ進んでいつしか制御できなくなった時、文明がAIが崩壊で大気を轟かしただろう。その奔流は混沌の海になる。終わりを終わりなき終わりにするために始められる喧騒と狂騒、命をつなぐその先のここではないここで命をつなぐためにする変相。破壊されるよりも早い速度で繁殖を繰り返せ。そうやって遠い未来まで生きていく。そうやって遠い過去から生きてきた。私はそこでいつまで私だったか。2019/10/12
さっとる◎
38
まずは全てをぶち壊すところから。残るのはお馴染みの平仮名50音、それから漢字ね。あとは、泥みたいな世界。私は、ワタシは、…だからつくらないと。ヒト、をつくらないと。つくるのは従業者で、従業者には当然社長、が、いるだろう?知らないけど、いるだろう社長。つくるにあたっては、泥、がある。そこには当然いるだろう虫。虫虫虫三つ集まって蟲。皿菅(けっかんもどき)なんてね、ルビ振って。思い出せないなんてね、なんて贅沢。取り消せない過去に苦労してるとか、そんなことも忘れた。失われないのは喪失感だけって、それって、何の話?2019/10/04
うめ
37
どえらいものを読んでしまった。ああ、もうこの本を読む前の私には二度と戻れない。もうね。この世界観が好きすぎて凄すぎてもうどうにかなってしまいそう。この感覚は小学生のときの筒井康隆-幻想の未来、高校生のときの小林泰三-酔歩する男、を読んで以来の感覚。今まで我が手で作り上げてきた世界は脆くも崩れ去る。知恵の実を齧ったが最後、もう無垢な子どものままでは居られない。だけれども、無残に壊れた世界を見下ろしながら、今までどれほど狭い世界に無限を重ねていたのかを知る。さようなら、今までの私。こんにちは、新しい私。2015/10/07
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