内容説明
すべての自然法則を包み込む単一の理論、“万物理論”が完成されようとしていた。ただし学説は3種類。3人の物理学者がそれぞれの“万物理論”を学会で発表するのだ。正しい理論はそのうちひとつだけ。映像ジャーナリストの主人公は3人のうち最も若い20代の女性学者を中心に番組を製作するが…学会周辺にはカルト集団が出没し、さらに世界には謎の疫病が。究極のハードSF。
著者等紹介
山岸真[ヤマギシマコト]
1962年生まれ。埼玉大学教養学部卒。英米文学翻訳家・研究家
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
180
表題にある万物理論の完成が近付きつつある中で、不思議な異変が起こり始める近未来を描いたお話。死体から記憶を抜き取る技術、汎性(中性)人間や奇妙なカルト集団など近未来の造形が面白い。よくもこれだけ沢山のネタを集めて凝縮したと思う。PKディックなら4~5本の話が書けた気がする。アイデアてんこ盛りだが詰め込みすぎて少し散漫な気もする。人間宇宙論者が現れると、強い人間原理を知っている読者には少し先が読めるだろうが、その所為でつまらなくなるようなヤワな話では無い。2015/08/24
若布酒まちゃひこ/びんた
38
本質的に物理現象と情報が等価なものであるとしたとき、すべての物理現象を説明しうる理論を知ることは、極限的な情報量を押し付けられるのに等しい。ぼくらが物理現象と呼んでいるものは、結晶化した情報のようなもので、万物理論により物理現象が溶解していく。…いろいろおもうことはあるけど、イーガンすげえ!っておもうには手っ取り早い本。2015/11/30
白義
24
一体、この本一冊に綴られ、あるいはほのめかされたアイデアだけで、何冊長編が書けるだろうか。生命工学、ジェンダー、情報技術といろいろな側面からイーガン流の近未来社会が描かれている。これに、科学と人文学や宗教、神秘との拮抗を軸にした社会派的な要素が精緻に描かれ、まるで本当に未来を見てた書いたようなリアリティーがある。そうした社会派SF要素だけで凄まじい力作だが、後半世界観自体が揺るがされる壮大な奇想が語られるのだから目眩をしてしまいそうだ。まさにハードSFの楽しさてんこ盛り。必読の傑作2012/01/04
葵衣
22
もうね、最高ですよ!!イーガン先生!!!イーガン作品はとにかく難しい。数多の未知の言葉と格闘しながら亀のように読んだ。でも不思議とそれが楽しい。難しさが減りサクサクと読める部分では、物足りなささえ感じた。本作はアイデンティティ、物理学、バイオテクノロジー、宗教……といった様々な要素がふんだんに盛り込まれ、しかも各々に関して非常に詳細で誠実な描写がなされているのだ。なんと贅沢な読書だろうか。楽しい。とにかく楽しい。知的興奮を存分に味わうことのできる作品である。完全にイーガンの虜となってしまった。2018/06/30
わたなべよしお
22
やっぱ、グレッグ・イーガンって、面白いのだけれど難しいよなぁ。この本もちゃんと理解できたか、ちょっと怪しい。なにせ、使われているアイディアのひとつひとつの内容が濃すぎて、イーガンの世界にどっぷりと浸かるのは、とても疲れるのだ。2018/02/11
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