内容説明
わたしはP・K・ディック、SF作家である。わたしの親友のニコラスが、ある日神秘体験を得た。何かが星の彼方から啓示を送ってくるという。ニコラスはそれをVALISと呼んだ。折しも合衆国では、新しい大統領が、国家転覆を目論む破壊活動機関の存在を主張、これを粛正せんと動きだした。わたしも取締官にマークされ…。『ヴァリス』の原型となり、著者の死後刊行された傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ボーダレス
13
反戦、反暴政といったメッセージが強く、PKDが神秘的体験に基づいて書かれた、半自伝的要素の強いフィクション。天の声ヴァリシステムA(ヴァリス)のメッセージを使い、監視圧制という恐怖社会に君臨するアメリカ大統領フレマントを失脚させようとするニコラスとフィルの物語。PKD神学の解釈は難しいが読み物としては面白かった。2019/07/24
もよ
7
『ヴァリス』の前に書かれ、ほぼ完成していながら出版されることがなかった、PKディックのこれ以前の「SF小説」に通じるところがある、『ヴァリス』と比較すれば分かりやすい小説。ここからさらに一歩踏み出し、帰ってこなくなってしまう。合掌。2015/08/24
東森久利斗
4
ディックの代表作であり問題作でもある「VALIS」の原型というふれこみに、読む前から恐れをなし平伏してしまうも、想像を裏切るいたってまともな、これがディックかと疑ってしまうほどの常識範囲の内容、理路整然とした物語、精神世界と現実世界の切り替えも明解、支離滅裂で解読困難なジャンキーなトリップ感もなく、ディックワールドを堪能、迷子になることなくゴールまで完読。集大成的に、ディックなコンセプトやシーン、ガジェットが登場するのが、ファンにはうれしいところ。巻頭ページのティム・パワーズ向け謝辞が泣ける。2025/04/22
またの名
3
『ヴァリス』の系列に属する半自伝的電波妄想SF小説。批評家や研究者はたいてい作家の神秘体験を讃えるか一切無視して構造的な分析に努めるかしてしまうのだけど、エネルギー炸裂でも文化的価値をそれほど含んでもいないシュレーバーのような稀代の妄想体系だって結局は妄想なわけで、病跡学的なアプローチは忘れちゃマズイんじゃないか。と言いつつも本作をdisる意図はなし。『ヴァリス』よりも突飛な展開が抑えられている分、作品としてはより完成度が高い。人間の限界を超えたい中二病患者に読ませれば、症状の末期化は確実(ほめている)。2013/06/19
カン
2
ディックには世界がこう見えてたのか。(本人にとって)実話なのがやりきれない。2019/03/28
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