内容説明
この世に生まれ出た彼女の頭脳は申し分ないものだった。ところが身体の方は機械の助けなしには生きていけない状態だった。そこで“中央諸世界”は彼女を金属の殻の中に封じ込め、宇宙船の身体をあたえた。優秀なサイボーグ船の誕生…それでも、嘆き、喜び、愛し、歌う、彼女はやっぱり女の子なのだ。乙女の心とチタニウムの身体を持つ宇宙船の活躍を描く、傑作オムニバス長編。
著者等紹介
マキャフリー,アン[マキャフリー,アン] [McCaffrey,Anne]
1926年、合衆国マサチューセッツ州生まれ。53年にSF専門誌“サイエンス・フィクション・プラス”に短編が掲載されデビュー。67年に初長編であるRESTOREEが刊行された。68年にヒューゴー賞ノヴェラ部門を、69年にネビュラ賞ノヴェラ部門を受賞。69年に刊行された『歌う船』はもうひとつの代表作である。その後、70年代には「アメリカSF界の女王」と謳われ、80年代にかけてのサイエンス・ファンタジー・ブームの時期には立役者として人気を誇った。2011年没
酒匂真理子[サコウマリコ]
1949年生まれ。フェリス女学院高校を経て、1971年、横浜市立大学文理学部卒業。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くたくた
28
先天性の重度身体障害の子どもに、「宇宙船」という体を与え、宇宙船の中枢に人工知能ならぬ天然の知能を搭載した「ブレインシップ」とそのパートナーたる操縦士の話。短編連作の形をとっている。翻訳SFを読み始めて比較的初期に読んだ本だけど、ものすごく感動したわけではないけど、良作だと思った。もやはSF古典の域か。
タカギ
26
素敵なSFだった。脆弱な人間の肉体の代わりに宇宙船の身体を与えられた女の子の話。主人公の宇宙船・ヘルヴァが溌溂としてすごく魅力的。申し分のない操縦士を見つけて順風満帆かと思いきや、彼とは早々に別れることになる。悲しみに打ちひしがれながらも、臨時の操縦士を乗せ、着々と任務を成功させるヘルヴァは精神的にも成長していく。「人が好き」「まちがえることなんかこわくない」と言う彼女はとても素敵だ。最後に彼女が欠点も認め合える伴侶を乗せられて良かった。『スカーレット・ウィザード』はこの本の影響を受けていると思う。2020/12/14
かとめくん
26
宇宙船の司令部に人間の脳を使った、サイボーグ宇宙船の活躍を描く連作集。宇宙を駆け巡る姿や乗組員との関係など、サイボーグ船ならではのストーリー作りは良かった。スタートレックみたい。「船」がたくさんいて、それぞれ借金だったり、契約だったり、性格だったり様々な問題を抱えていたりして。そんな背景での「歌う船」と呼ばれた船の活躍。「歌う」というコンセプトが更に強いともっとよかったのになあ。2014/05/21
みみずく
21
優秀なサイボーグ宇宙船ヘルヴァ。<中央>からの任務をこなすため「筋肉(ブローン)」と呼ばれる乗組員とペアになる。最初の「歌う船」があまりにせつない。初めての相棒と驚くほど心が通いあうのだが、まだヘルヴァはそれを恋ということを知らない。そしてその後一作一作進むにつれて成長し、自分が「チタニウムに包まれた人工知能」だと誤解されるのを嫌がり、人間として向かいあってくれる真の相棒を見つける。SF初心者にもなんとかついていく事ができたけれど、本当にサイボーグのお話はせつないな。「フランケンシュタイン」を思い出した2014/07/21
harutamano
20
高校時代に出会い、幾多の夜を共にしたヘルヴァ。復刊され多くの方に読んでもらえる機会、そしてヘルヴァとナイアルのあれやこれやをネットを通じて言い合える時代がまさか来ようとは!ありがたや。2020/10/25