創元SF文庫
殺す

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  • サイズ 文庫判/ページ数 138p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784488629144
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ロンドン郊外の高級住宅地で発生した大量殺人。32人の大人全員が殺され13人の子供が誘拐された。迷宮入りしかけた事件に内務省は精神分析医を招聘した。鬼才作家の予言の書。

内容説明

6月の土曜日の朝、ロンドンの超高級住宅地で住人32人が惨殺された。高い塀と監視カメラに守られた住宅地で、殺されたのはすべて大人。そして13人の子どもたちは何の手がかりも残さず、全員どこかへ消えていた。誘拐されたのか?犯人はどこに?2ヵ月後、内務省に事件の分析を命じられたドクター・グレヴィルは現場を訪れるうちにある結論に到達する。鬼才が描く現代の寓話。

著者等紹介

山田順子[ヤマダジュンコ]
1948年福岡県生まれ。翻訳家。立教大学社会学部社会学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

GaGa

41
正直、全盛期の筒井康隆作品を読んだような感覚。これ、実際に単行本として海外で発行されたようだけれど、ここまで短くて、新味がない本が出版されたのかが分からない(「4年前の「太陽の帝国」が映画化され、そのおこぼれか?)正直「千年紀の民」に併せる形で出すぐらいの方が良かったのではないかと思う。ただ、誤解ないようにいうと、つまらない作品ではない。2011/09/11

拓也 ◆mOrYeBoQbw

37
SF中篇。推理ミステリー。ロンドンで高度監視の超高級住宅街で32人の住人が殺され、13人の子供達が消え去った事件を一人の医師が捜査していく物語です。同著『ハイ=ライズ』でも感じたのは”J.G.バラードは起承転結が不要な作家”という感想。確かに物語性はあるのですが、カタルシスや勧善懲悪を与えるタイプではなく、”小説や演劇以前の、神話や伝承”に回帰して、人間の根源的な部分をSFの中で可視化してると思いますね。社会の縮図であり個人の拡図、どんな突拍子もない話でも、ポイントを抑える流石の手際です(・ω・)ノシ2018/09/12

白義

22
何不自由ない超高級住宅地で、考えうる限り最高に洗練された家族たちに起きた大量殺人・誘拐事件。その裏にある衝撃の真実……は勘のいい人間でなくてもほぼ読む前からわかってしまうし、テーマもフーコーとかボードリヤールを読んでいたら思想的に露骨で目新しいものではない。しかし真の醍醐味はその真実の背後にあるどうしようもなく透明で切実な叫びと、優しく、清潔でリベラルな、真綿で締めるかのような環境のディテール。即物的でドライな文体、全てが終わった後に分析されていく単純なストーリーがかえってその恐ろしさを強く際立たせている2017/06/30

空猫

20
バラード作品を読みたいと思ってみたが難解でしかも分厚い本が多く、薄い本作(130頁)を選んでみた。高級住宅街地で住人32人が殺害され、その家の子供13人が行方不明になった事件を捜査する形で物語は進む。しかしこれはミステリではない。「…〈愛情と理解〉というとめどない食餌に、窒息しそうになっていた。それは大人にとって最高と思える理想の子供時代に過ぎなかったからだ(p81)」貧困、怨恨だけが殺人の原因とならない現代社会の歪みを描いた、強いて言えばSF的寓話か。やっぱり難しいや(><)2016/03/04

かわちゃん

17
☆☆☆☆ 久々のバラード。小編なれど、相も変わらずバラード世界な一冊。ロンドンの新興高級住宅地で起きる32人の大人の連続殺人と、13人の子供の失踪。描く物語は凄惨なれど、語り口は極めて冷徹で平熱。バラードって結局物語を描きたいのではなく、その起点となっている現代の病巣や、本質的な文化としての劣化や悪化みたいなものを、恐怖として描くことで警鐘を鳴らすという文化学者としての論説なんだろうな。と、またこの本を読んで思ったわけです。賛否あれど、個人的にはクセになる世界です。2018/04/26

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