内容説明
第二次世界大戦を予見したかのごとき悪夢を描いた表題作「世界最終戦争の夢」のほか、怪奇生物譚として名高い「アリの帝国」「クモの谷」、植物怪談「めずらしい蘭の花が咲く」、文明批評譚「盲人の国」など、必読の12篇を収録。
著者等紹介
ウェルズ,H.G.[ウェルズ,H.G.] [Wells,H.G.]
1866年、英国イングランド生まれ。フランスのジュール・ヴェルヌと並んで「SFの父」とされる。代表作とされる「タイム・マシン」(1895)、『モロー博士の島』(1896)、『透明人間』(1897)、『宇宙戦争』(1898)、『月世界最初の人間』(1901)などをはじめ、現代SFの基礎となるアイデアの大半はウェルズが発案したものである。小説のみならず、歴史家としても『世界史概観』(1922)などの著作がある。社会活動家としても多くの業績を遺した。1946年没
阿部知二[アベトモジ]
1903年岡山県生まれ。1927年東大英文科卒。創作、論評、英米文学の紹介で活躍。著書多数。1973年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tetchy
115
SFの父ウェルズだが、SFに囚われない作品群が集められた。ウェルズには独特のユーモアと云うかシュールさがある。この作家、どこかネジが1本外れているように思える。本書のベストは「盲人の国」。我々の当たり前が覆される様を見事に描いた作品だ。あとウェルズがSFの大家であることを感じさせるのが表題作で空を飛ぶ戦闘機械の件だ。1901年の作品であり、ライト兄弟による飛行機が誕生したのが1903年となんと2年も前のことだ。やはりウェルズは巨匠だ。SF以外の物語も一つも二つも抜きん出た創造力を発揮しているのだから。2021/08/29
ふみふみ
8
古典的な怪異談のような趣です。SFにするならアリもクモももっと景気良く巨大化させましょうですがそこは生物学者としての矜持なのかウェルヌの二番煎じは嫌と思ったのかは不明ですw。「海からの襲撃者」はクトゥルー神話のような印象を持ちました。怪物がミニダゴンって感じです。2021/02/06
gu
7
当時の価値観で書かれた作品ではあるが自分たちが世界と思いあがった人間が手痛いしっぺ返しを食らう話が多いのは辛辣な文明批評家ウェルズと言うべきか。(「で、おまえは世界へ出てきたのだね」ペドロがたずねた。/「世界からきたのさ」『盲人の国』)最初の数編を読んで、怪獣の出てこないウルトラQという言葉が浮かんだが、着ぐるみの大怪獣が出てこないだけで立派に怪獣小説だと思い直した。南米を制圧したアリの大群、血を吸う植物、人食い蛸。ヨーロッパの外に「驚異」がありえた時代の想像力。もっとけばけばしくなると香山滋かなと思う。2021/09/09
刳森伸一
5
第1巻の「タイム・マシン」のような超有名作は所収されていないし、現代SFのような派手さもないけれど、思わず読み入ってしまう短篇小説が並ぶ。特に「盲人の国」は色々と考えさせられる傑作。表題作の「世界最終戦争の夢」もいい。2016/09/23
へいへい
4
表題に惹かれたが、良かったのは「盲人の国」。SFにあまり詳しくないからかも知れないが、100年前の作品なのに古さを感じなかったのは凄いことだ。2020/12/10