創元推理文庫<br> 処刑人

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創元推理文庫
処刑人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 344p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784488583057
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ある日曜の夜。独善的な父親が開いたホームパーティで、ナタリーは見知らぬ男に話しかけられ、そのまま森の陰へと連れ込まれた。(たいしたことじゃない、何もかも忘れよう)おぞましい記憶を抑圧する彼女はカレッジの寮でもなじめず、同世代の少女に対する劣等感と優越感に苦しむ。やがて、トニーと名乗る少女との出会い、ナタリーは初めて他人に安らぎを見出すが……病んだ幻想世界と救いのない現実が交叉する、ジャクスンの真骨頂とも言うべき傑作。

シャーリイ・ジャクスン[シャーリイ・ジャクスン]

市田泉[イチダイヅミ]

内容説明

皮肉屋で独善的な文筆家の父と、人生への希望を失った母の元を離れて大学の女子寮に入った17歳のナタリー。息詰まる家を脱出した先に待っていたのは、理解不能な同級生や高慢な上級生たち。ただ一人、トニーという風変わりな少女だけは他と違っていた。彼女なら、どこまででもあたしを連れていってくれる…。思春期の少女の心を覆う不安と恐怖、そして憧憬を描く幻想長編小説。

著者等紹介

ジャクスン,シャーリイ[ジャクスン,シャーリイ] [Jackson,Shirley]
アメリカの作家。1916年、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。48年、長編The Road Through The Wallで本格的にデビュー。65年没

市田泉[イチダイズミ]
1966年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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harass

65
『山荘綺譚(丘の屋敷)』以来のこの作家の長編を読む。ここ最近この作家の作品が訳される事が多いように思える。その一冊。大学の寮に入った主人公の少女は、作家である父の影響のせいか、自意識過剰ぎみだった。少女の一人称の語りで進む話は注意しないと彼女の空想と現実が入り乱れ、モヤモヤ感が狂気を醸しだす。実にシニックなところがあり、うへえと感じつつ読み続けた。米国人作家らしからぬエグさ。展開的に予想がつかなかった。あまり期待していなかった本だが楽しめた。2017/01/25

藤月はな(灯れ松明の火)

59
開放を求めてもがき苦しむ、余りにも繊細すぎる魂。逃げてもそこは更なる煉獄にしか過ぎなかった。そして依存関係を断ち切らなければ、真の開放に繋がらないジレンマ。「大学に入る前の森で何があったのか」を想像すると「なぜ、男はお咎めなしで、女だけが周囲から一方的に偉そうに責められなければいけないのか」と怒りと、なのに沸き上がってくる自己嫌悪で吐きたい気持ちになってくる。そしてナタリーの悩みに対して頻繁に連絡してくる父よりも人生に憂んだ母が気づく場面が印象的だ。でも軽やかなラストに不穏を感じるのはどうしてなのだろう?2017/09/26

有理数

29
エンタメ的に決して面白いお話という部類の物語ではないはずなのですが、これが滅法面白く夢中になって読みました。家族の元を離れて大学の寮に入ったナタリーが、様々な人間関係の渦中で内省的になりながら、それらをひたすら見つめ続けるお話です。登場人物はいや~な感じの人たちばかりですが個性的。ただ「面白い」という感情と「息苦しい」という感情が共存しています。「見つめ続ける」ことが本当にそのまま行われるので、確かに周囲の生活や人間との断絶や違和が節々からせり寄ってくる不穏。装画も素晴らしいです。2017/02/16

りりす

26
シャーリイ・ジャクスンらしい、気まずい不快さと現実と空想の境が分からなくなるお話。どこかで「少女版『ライ麦畑でつかまえて』」と聞いていた通り、理想と現実のどちらにも身の置き場がない主人公の青春小説(ただ本当に少女版ライ麦がこれかどうかは解らない)。好意的に解釈して子供を愛して気にしてはいるけど、処刑台の私を助けてくれなかった両親と、魂の双子だと思えた友人トニーの存在に見に覚えがあった。謎が残る。2017/01/03

不在証明

22
あぁ、なんておもしろい、ジャクスンのこんな話が読みたかったのだ。ナタリーは貝のように固く閉ざした心を持っているわけではなく、頑なな態度に人は違いなど無いと言うかもしれないが、人と関わったうえでほのかな疎外感、なんとはなしの居心地の悪さ故に離れていくのであって、それは最低限世界とコミュニケートした挙句のひとつの選択だ。心惹かれる友(トニーは自分の作り出したもの、という読み方による)との笑み浮かぶ会話等、むしろ単に一人遊びが好きだから、一人でいられるところへ足が向かった、それだけのような気もしてくる。2017/01/05

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