内容説明
1938年、冬のニューヨーク。貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女ジェニーはなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる…詩人ネイサンの傑作ファンタジイ。妻を亡くした童話作家とその子供たちの、海の精霊のような女性との交流を描く『それゆえに愛は戻る』を併録。
著者等紹介
大友香奈子[オオトモカナコ]
1965年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
49
恩田陸さんの小説『ライオンハート』は『ジェニーの肖像』へのオマージュとして書かれたと知り読むことになった。『ジェニーの肖像』は若い画家、『それゆえに愛は戻る』は若い童話作家が主人公。どちらも主人公が謎の女性を想う切ないまでのリリシズムに溢れた作品。大切なものであればあるほど、それが壊れてしまったり、失ってしまうことに対する怖れが心の片隅に芽生える。幸せの刹那であってさえ、心は喪失の予感につつまれる。いや、喪失の予感につつまれているからこそ、幸せの刹那は儚くもその輝きを増すのだ。2012/07/06
みっぴー
42
幻想的な時空跳躍ものですが、明確なネタあかしがないため、結局なんだったのか、分からずじまい。恩田睦先生の解説の方が面白かったです。売れない画家、妻を無くした小説家の前に現れて、ふっと消える謎の女性。その女性が、芸術家にとって命とも言えるインスピレーションを具現化したものだと解説されています。ちなみに恩田さんが『ジェニーの肖像』を読んだのは小学生のころ。早熟Σ(゚ロ゚;)2018/09/23
ちはや@灯れ松明の火
40
きみがどこから来たのか、ぼくは知らない。夕暮れに沈む遊歩道、軽やかに跳ねる姿、待っててくれたらいいなときみは願いをかけた。つないだ手、アトリエのティーカップ、忘れちゃだめよと笑った。次に会えるのは、いつ。できるだけ、早く。キャンバスの中、かなしみに沈みよろこびに弾むきみが黒衣をまとう。待っている、昨日も、明日も。春の野原、スミレの花束、ずっといっしょにいられるようになるまでは。風が吹き、海が流れる、ぼくらはやっといっしょになれたのに。きみの人生の糸はぼくの糸に織り込まれていた、ただそれだけは知っていた。 2016/01/21
藤月はな(灯れ松明の火)
32
売れない風景画家の青年はジェニーと言う名の少女に出逢った。ジェニーの肖像を描くために逢う時間も多くなるが同時に彼女は齢を重ねていく。そしてジェニーは言う、「私を待っていて」と。恩田陸さんの「ライオン・ハート」はこの作品のオマージュ。でもこの作品は彼女が主人公を逢える時間が長くなればなるほど哀しい予感が募り、不安で仕方がなくなります。そして永遠の別離に胸が一杯になります。永遠の別離を知っていたからこそ、受け止めるしかないという喪失感とそれでも彼女のことを愛していたということがしみじみ、分かるラストが印象的。2013/02/01
かおりんご
28
小説。先日読んだ「洋書天国へようこそ」で気になった本。どちらの話も、SFというかファンタジーというか、とても不思議な世界だった。共通しているのは、「愛と喪失」。この本の題名にもなっている「ジェニーの肖像」は、越谷オサムさんの「陽だまりの彼女」っぽかった。2020/03/21