内容説明
朧な太陽のもと、魔術や降霊術が横行する地球最後の大陸ゾティーク。ブラッドベリ、ムアコックに影響を与えたことでも知られる異才が、細密かつ色鮮やかな描写で創りあげた美と頽廃の終末世界の物語を、本邦初となる全篇収録の決定版で贈る。地獄の王にそむいた妖術師の復讐譚「暗黒の魔像」、失った鳥を求める波瀾の航海を描く滑稽譚「エウウォラン王の航海」他全17篇を収める。
著者等紹介
大瀧啓裕[オオタキケイスケ]
1952年、大阪市生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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眠る山猫屋
65
なんとなくラヴクラフト門下のイメージがあったCAスミスさん。けれどこの本はむしろクトゥルー神話から離れたダークなファンタジーの集大成。太陽が衰えた遥かな時代、最後の大陸ゾティークの歴史に名を遺す、或いは誰にも知られず消えていった国々・魔導師たちの物語。絢爛にして陰鬱という二律背反を見事に昇華した物語たち。降霊術師や拷問王国、魔神タサイドンの配下などなどエロスもグロテスクも現代に通用するレベル。当時はさぞ衝撃的だったのではないか。そして(翻訳者の力量も含めて)素晴らしき美文の煌めき。凄いの一言だ。2020/02/04
藤月はな(灯れ松明の火)
56
読友さんからの賛美が凄い作品。なんで今まで読まなかったんだ!!トリニティ・ブラッドを連想させるようなゴシックな遠未来でありながら科学や太古からの地球外生命体は出てこなく、魔術や魔物が跋扈する退廃的雰囲気が漂います。特に煌びやかで残虐な王の国が銀死病の猛威によって蹂躙される『拷問者の島』の素晴らしさといったら!ラストの全てが鈍色に染まった場面は鮮やかに眼裏に浮かび、その永遠の静寂による美しさに戦慄せざるを得ませんでした。2014/04/11
sibasiba
31
魔術と降霊術が跋扈する超未来の大陸ゾティークを舞台にした短篇集。どれも昏い怪奇譚なのでバッドエンドが大半だがプロットも落ちも関係なしに文体に酔うのが正しい楽しみ方だろう。どれも好みだが『ナートの降霊術』は奇妙なハッピーエンドで特に好き。2014/10/28
かりさ
28
詩人である著者が紡ぎ創り上げた、地球最後の大陸ゾティークの物語。幻想怪奇の中に妖しく艷めく世界。終末世界で大きく存在し、支配するのは魔術や降霊術。暗黒的退廃的世界をここまで色鮮やかに艶美に感じるのはどうしてでしょう。たまらなく魅了されます。ゾティークへと誘う冒頭の詩から心地良く惹き込まれます。「降霊術師の帝国」「エウウォラン王の航海」「ウルアの妖術」「最後の象形文字」「アドムファの庭園」がお気に入り。解説も読み応えあり。東逸子さんの表紙絵が素敵です。2011/06/05
拓也 ◆mOrYeBoQbw
24
幻想短篇集。クトゥルフ神話の代表的作家C.A.スミスの作品で、『黒の書』三部作の第一弾になります。全体的に漂う耽美なダークサイド・ファンタジーの雰囲気と、悪漢や妖女が跋扈する物語は他の作品では味わえないと思います。個人的に良かったのは『モルテュッラ』、これを最後に挿れるのは見事だと思いました~2015/04/26
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