内容説明
古ぼけたアパートの一室で発見された、若く美しい女性の変死体。事件につきまとう、ひげのある男のいくつもの影に、捜査に乗り出した郷原部長刑事たちは翻弄され続ける。現場周辺で目撃された不審なひげのある男、被害者と頻繁に旅館へ出入りしていたひげのある男…。はたして犯人は誰なのか?著者のデビュー長編にして、ユーモアと堅固な論理性とひげに満ちた傑作本格推理。
著者等紹介
結城昌治[ユウキショウジ]
1927年、東京生まれ。早稲田専門学校卒。1959年「EQMM」の短編コンテストで「寒中水泳」が一席に入選。同年『ひげのある男たち』を刊行。幅広いジャンルの作品を発表し、『夜の終る時』で第17回日本推理作家協会賞、『軍旗はためく下に』で第63回直木賞、『終着駅』で第19回吉川英治文学賞を受賞。1996年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tetchy
113
独身女性殺人事件の容疑者がおしなべてひげを生やしており、捜査担当の刑事もまたひげを蓄えており、ひげ尽くしのミステリとなっている。昭和を代表するミステリ作家結城氏もさすがにデビュー作はまだまだ粗さが目立ったが、かつて検察庁で事務官として働いていた結城氏ならではのツイストが本書にはある。物語の最後に登場人物が呟く、警察を信頼しなかったものが悪いのか、それとも信頼されなかった警察が悪いのかという問いかけが本書の内容を十分説明しているように思える。さて私も50に近づいたことだし、まずはひげでも生やしてみようか。2019/09/17
夜間飛行
82
さんご荘に住む男女の生活を一コマ一コマ並べ、しゃれた映画のような冒頭。8つめのシーンで死体が発見される。被害者はアパートに住む美女、発見者は管理人のおばさん、捜査担当はひげの郷原部長。住人の一人に画家で探偵の香月栗介がいる。本作では一つのシチュエーションを基に様々な仮説が立てられ、警察の地道な捜査により関係者の人間関係が洗い直されていく。昭和の安アパート「さんご荘」の地理的・空間的条件が謎解きの中で巧みに活かされている。全体として会話が軽妙で読みやすい。最後は快刀乱麻を断つ推理。真相にはかなり驚かされる。2019/02/14
Nozomi Masuko
22
古ぼけたアパートの一室で発見された若く美しい女性の変死体。ひげが自慢の部長刑事が捜査に乗り出すが、事件にも常にひげのある男の影がつきまとう。結城昌治さんのデビュー長編。私が本を選ぶときの参考書「この警察小説がすごい!」にランクインしていたので読んでみたが、ユーモラスで推理も本格的、初版の刊行から60年近く経っているとは思えない作品。個人的には、登場人物が多くて途中わからなくなったり、ユーモラスな雰囲気に惑わされて軽く読み流したら重要なところだったり、ちょっと難しいと感じる部分もあったかな。2016/07/03
涼
13
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2018/09/post-0001.html2018/09/23
harukawani
13
『結城昌治読本』に触発されて、初めての結城長編。「一人のひげのある男によって惹き起こされ、一人のひげのある男によって結末を告げる」殺人事件。ユーモラスな語り口でぐいぐい読まされた末の解決で、全編にわたってガッチガチの論理で固められていたことに気付かされる。すばらしき本格ミステリー。傑作…。登場人物のキャラクターの良さもまた特長。というか、たぶん、結城昌治作品は全部そうなんだろうと思わせるぐらい、とにかく良いのですよ、郷原部長とかその部下たちとか容疑者たちのキャラクターが…。続編(積読中)も当然読みます。2017/01/22