内容説明
入院中、同室となった男に、雀荘を経営する妹の安否を確かめてほしいと頼まれた私は、戦後の焼け跡が広がる街を、彼女の影を追ってひたすらに彷徨う―国産ハードボイルドの原点となった記念碑的作品「X橋付近」をはじめ、運命の女・志賀由利の足跡を描いた「賭ける」ほか四編の連作、そして名品「ラ・クカラチャ」などを収録。全集第二巻は名高き傑作群にエッセイを併録した。
著者等紹介
高城高[コウジョウコウ]
1935年北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。大学卒業後は北海道新聞社に勤めながら執筆を続けたが、やがて沈黙。2006年『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』で復活を遂げた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
25
「X橋にて」は作者の分身の変化してしまった非情な世の中への視点よりも8章のある人物の静かな心境の方がハードボイルドだと感じました。生活苦や日常の鬱屈に押し潰された人々を突き放した目線で鮮やかに描く「廃坑」や「ラ・クカラチャ」、真相が陰惨だったからこそ境地が際立つ「淋しい草原に」が印象深いです。弱かった女の魂の彷徨を描いた由利シリーズも心に残ります。エッセーも「ハードボイルドとは何か」ということが論じられており、高城氏のハードボイルドへの真摯な思いが伝わってきます。この人の作品が本当に愛おしいです。2013/03/27
ひねもすのたり
16
本書は著者の代表作である『X橋付近』を収めた作品集。 日本でハードボイルドといえばバイオレンスやアクションと混同されがちです。いずれも昭和30年代に書かれたものですが、ハードボイルドとは何か?という問いに対して明確な答えを出している作品群と言って過言ではありません。 巻末に収録されているハードボイルド論にはハメット、チャンドラー、ロスマクに並んでヘミングウェイとフィッツジェラルドを俎上に載せています。 ここしばらくチャンドラーの新訳を手掛ける村上春樹さんの文学論と共通する部分があるように感じました。★42017/05/01
ネムル
13
日本ハードボイルドの夜明けを飾る、昭和30年代の作品群。戦後に進駐軍が駐留した仙台や北海道の場末を舞台に、虚無たい人物関係や行き場のない自嘲が、過度にじめっとならない文体で描かれる。戦後闇文学の佳品揃いで、この全集はおって読んでいきたい。2021/02/04
さんつきくん
6
昭和30年前後の仙台を舞台に、薄暗い世界で鋭い視線が交差する、高城高さんの短編集。ハードボイルド。初めてこの手の小説を読んだ。進駐軍や数々のお酒が交わり、感の良さ、駆け引きはスリルがあった。「X橋付近」、「淋しい草原に」が個人的に好き。そして、数奇な運命を辿る志賀由利シリーズ。仙台ですれ違った感情から男性を憎み、フェンシングの勝負に賭け、北海道、果てはスペインまで流転した運命。翻弄されてるけど、かっこいいって印象を受けた。2014/05/17
山田太郎
3
なんてことない話だけど、文章がうまいと思うのよ、これが。2008/07/07