内容説明
財産家のおばが住まう崖の館を訪れた高校生の涼子といとこたち。ここで二年前、おばの愛娘・千波は命を落とした。着いた当日から、絵の消失、密室間の人間移動など、館では奇怪な事件が続発する。家族同然の人たちの中に犯人が?千波の死も同じ人間がもたらしたのか?雪に閉ざされた館で各々推理をめぐらせるが、ついに悪意の手は新たな犠牲者に伸びる。
著者等紹介
佐々木丸美[ササキマルミ]
1949年北海道生まれ。75年『雪の断章』でデビュー。77年『崖の館』を発表。抒情と幻想を湛えた独自の作風で人気を博す。2005年12月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
145
もっと早く読めば良かった一冊。舞台は断崖にそびえる雪に閉ざされた洋館。いとこという幼少時からの家族同然の血縁の中での疑心暗鬼が魅せる、もっと早く読めば良かったという思いが押し寄せる、そんな物語だった。絵画消失、密室事件、転落事故、そして二年前に転落死した千波の残した日記が見つかったことから、海鳴りに呼応するかのように増す不穏な空気、不安感と数々の悪意が更に物語へと引き摺り込む。犯人は朧げにわかるものの、それぞれの推理、知られざる一面、過去が、今が明かされていく過程、そして何よりも人の濃密な心理を楽しめた。2022/03/09
相田うえお
113
★★★☆☆19086 崖の上に建つ館、海と雪に閉ざされた空間、本ジャケの妖気な絵、凄い事が起きそうで、もう読む前からワクワクモード! 伯母の住むこの館に泊まって暫く過ごそうと、従兄弟姉妹が集まってくるシーンから始まります。( 書き出し部から多くの名前が出てきたので、慌てて人物相関図を書きながら読んだんですけど、主要人物がまとまって登場しただけでした。) 気の知れた仲間のお泊まり会みたいで楽しそうですが、事件が!謎!謎!謎! いや〜この作家さんの作品は『カッパえびせん』と似てますね。やめられないとまらない!2019/09/15
ベイマックス
96
佐々木丸美作品3作目。館シリーズはお初。◎雪国の僻地の崖の上に建つ館。暮らす未亡人の元に孫たちが集う。2年前には唯一同居していた孫娘が崖から転落死している。今年は飾られていた絵画が1枚なくなり、孫娘の一人が密室から別の密室へ移されていたりの事件がおき、推理合戦になる。2年前に亡くなった娘のノートの存在も謎に一石を投じている。ちょっと昔の作品なので推理物として読むと物足りないかな。2021/03/10
セウテス
74
館3部作その1弾。〔再読〕綾辻行人氏が館シリーズを書く10年位前、海外ミステリを読んでいた私にとって、北海道の館という文字は心が躍った。本作は他に類を見ない「佐々木丸美の世界」の物語、ミステリの形だけではなく叙情的な語り口で、様々なジャンルに触れていると思う。よって本作の語り手高校生の涼子の独特な感覚に合うかどうかで、本シリーズを楽しめるかどうかが決まる可能性が在る。閉ざされた白雪の中に佇む館、この館が作者の精神世界の枠組みなのだろう。事件は起こり謎解きは在るのだが、心理描写の為の出来事の一つに過ぎない。2017/02/21
雪紫
56
再読。これは心理ゲームか犯罪か。あらゆる俗世から解き放たれた崖の館。少女の死と美術と知識を内包し、転落、絵画消失、密室。様々な謎が6人のいとこに訪れる。でも、不思議と食事シーンとか和むし(不思議と鱈のくんせいや鍋焼きうどんの描写が昔から好き)、展開知ってても、ああ、終わらなきゃいいのに。と切に願う(叶わないことは承知の上で)。興味深き、そのひとの人間性を構成する心理に伏線がゴロゴロ転がっている、丸美さんの中では一番勧めやすい話。2022/03/07